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2008年06月02日(月) 21時59分

タクシー客離れ加速 東京の値上げ半年、景気減速も影響朝日新聞

 東京都内のタクシー運賃が10年ぶりに約7%値上げされてから、3日で半年になる。乗務員の待遇改善が目的だったが、景気の減速傾向も重なって「客離れ」を招き、値上げ後も売り上げの前年割れが続く事態となっている。

 業界団体の東京乗用旅客自動車協会によると、主要35社の1台あたりの営業収入は、値上げした07年12月から今年4月まで5カ月連続で前年同月を下回った。4月は特に落ち込みが激しく、4.5%減った。

 協会の堀清孝広報委員長は「値上げの影響もあるだろうが、景気が大きな影響を与えている」と話す。景気の減速感が強まり、企業などがタクシー利用を抑制。食料品などの値上げラッシュもあり、「タクシーのような『ぜいたく』は避けたい」と個人客も離れているという。

 東京都内のタクシー業者は06年秋、国土交通省に値上げ申請した。通常は半年ほどで認可されるが、今回は認可まで1年以上かかった。「規制緩和の結果が値上げではおかしい」と、政府内で値上げに反対する意見が噴出したためだ。「結果として景気減速の時期に値上げが重なり、最悪のタイミングになってしまった」(タクシー大手幹部)

 昨年以降、全国90の運賃ブロックのうち48地区が値上げした。「状況はどこも似たり寄ったり」(国土交通省)で、値上げの「大義名分」だった乗務員の待遇改善は進んでいないという。多くのタクシー会社では、売り上げに比例する「歩合給」の比率が高く、営業収入減は乗務員の給与を直撃するからだ。

 一方、燃料のLPガスやガソリンの高騰は会社側の新たな負担になってきた。業界内には、燃料高を運賃に転嫁する仕組みの導入を求める声も出ている。だが、「客の反応を考えれば、これ以上、値上げはできない」という声も強く、新たな対応策は見当たらない。(大平要)

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