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2008年06月02日(月) 15時13分

穀物輸出規制「撤廃」求めず 食糧サミット行動計画朝日新聞

 【ローマ=喜田尚、ニューヨーク=松下佳世】3日にローマで開幕する食糧サミットで、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が発表する食糧危機問題の解決に向けた行動計画の概要が2日、明らかになった。食糧価格高騰の一因となっている穀物生産国の輸出規制の撤廃やバイオ燃料政策の抜本的見直しには踏み込まず、加盟国に配慮した玉虫色の内容となっている。

 行動計画は当初、食糧価格高騰により世界各地で暴動などが相次いでいる緊急事態を受け、国際機関が考える「取るべき対策」を示すことで加盟国に実施を促すのが目的だった。輸出規制撤廃や、バイオ燃料政策の再検討などは優先事項と見られていたが、自国の食糧確保を重視する中印などの穀物輸出規制国や、バイオ燃料促進を目指す米、ブラジルなどが反発。結局、両論を併記し、強制力を弱める形となった。

 行動計画は、世界食糧計画(WFP)や国連食糧農業機関(FAO)といった国連機関のほか、世界銀行や国際通貨基金(IMF)などのトップからなるハイレベル作業部会が、5月中旬から取りまとめ作業を進めてきた。潘事務総長は6月3日にベルルスコーニ伊首相と共催する夕食会で、各国にその概要を説明する予定。行動計画全体についてはさらに論議を重ね、今月中にも加盟国に示す方針だ。

 朝日新聞が入手した、39ページからなる行動計画の概要は、緊急対策として、貧困国への緊急食糧援助の拡大や小規模農家への種や肥料の支援などを挙げた。食糧危機に陥っている途上国と穀物生産国の間で賛否が割れている輸出規制については、撤廃は求めず、「人道支援目的のもの」は除外し、それ以外の規制も最小限にとどめるべきだとの表現に落ち着いた。

 中長期的対策としては、途上国の生産性向上のほか、市場や生産状況の監視による危機管理システムの強化などを挙げた。バイオ燃料については、促進政策自体を否定するのではなく、政府補助金の見直しなど、「世界的な食糧の安全保障に悪影響をもたらさない指針の徹底」を求めた。

 加盟国によって立場が異なることから、国連としては、行動計画はあくまで「各国の行動の参考となる指針」にとどめる考えだ。作業部会を率いる国連人道問題調整事務所(OCHA)のホームズ事務次長も5月29日に加盟国に対して行った説明会で、「行動計画は加盟国に対して拘束力を持つものではない」と述べ、履行を強制しないとの姿勢を強調した。

 サミットは5日までの日程で、最終日には参加各国による政治宣言も採択される。

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