記事登録
2008年06月02日(月) 11時16分

石原産業を捜索 ホスゲン無届け製造容疑朝日新聞

 化学メーカー・石原産業(大阪市)が四日市工場(三重県四日市市)で化学兵器に転用可能なホスゲンを国などに届けずに農薬の原料として製造していた問題で、三重県警は2日午前、化学兵器禁止法違反(製造の無届け)容疑で同工場や本社の家宅捜索に入った。経済産業省は5月30日に四日市南署に告発していた。同容疑での刑事告発は全国初。

三重県警の家宅捜索を受けた石原産業四日市工場=2日午前9時45分、三重県四日市市石原町

 2日午前9時ごろ、県警捜査員約25人が工場の家宅捜索に入った。大阪本社にも午前10時すぎ、捜査員約10人が入った。三重県警や経産省によると、同社は05年2月から06年10月までの間、四日市工場で計172.6トンのホスゲンを経産省に届け出ずに製造したという。告発の対象には法人としての石原産業だけでなく、当時行為を指示した責任者が含まれるという。

 化学兵器禁止法は年間30トン超のホスゲンを製造する場合、翌年の予定量と前年の実績について、少なくとも製造量30トンを超える30日前に同省に届け出ることを義務づけている。時効が3年のため、06年の製造分を届け出なかったことが容疑の対象になるとみられる。

 ホスゲンの製造については、同社が4月末から5月半ばにかけて三重県に提出した報告書で、「(無届け製造は)当時の四日市工場副工場長の不適正な確認と判断で行われた」としている。一方、同社が製造プラント建設中の04年1月、労働基準監督署に製造内容を届けた虚偽書類に当時の工場長が押印していたことがわかっており、上層部が不正を黙認していた可能性もある。

 石原産業は5月14日、ホスゲンの無届け製造のほか、放射線量率が基準を超過した汚泥「アイアンクレイ」の不正処分、約42年間にわたる海中へのアンモニアガス放出など7件の不正を公表。このうちの一つ、化学物質管理促進法に基づく国への届け出で、アセトアルデヒドなど8物質の量を少なく偽って届け出た問題では、大阪地裁が同26日付で同法違反として同社に8万円の過料金決定通知を出した。

 同社は67年に始まった四日市ぜんそく訴訟の被告企業の一つ。有害物質を含む土壌埋め戻し材「フェロシルト」を不法投棄した罪で、四日市工場の元副工場長が実刑、同社も罰金5千万円の有罪判決が確定している。

 三重県警の家宅捜索について、石原産業の織田健造社長は「今後の捜査に誠実かつ真摯(しんし)に対応します。取引先、株主、周辺住民にご心配とご迷惑をおかけすることにおわび申し上げます」とのコメントを発表した。

アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0602/NGY200806020001.html