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2008年06月02日(月) 10時30分

同性愛者虐殺の追悼碑がベルリンに完成オーマイニュース

 共同通信が報じたところによると、この5月27日、ドイツの首都ベルリンの中心部に、ナチスドイツによって処刑された数万(〜数10万?)にのぼる同性愛者を追悼するための記念碑が完成した。

 ドイツ連邦議会の決定(2003年)に基づくものだ。その隣には、ホロコーストで犠牲になったユダヤ人の追悼施設があり、今後、同じくナチスによって虐殺されたジプシー(ロマ)の追悼碑が建設される予定になっている。

■見事な映像手法で

 ゲイ・フォビアとは同性愛者を嫌悪する意想を指すが、他ならぬ同性愛者自身が保身のため、敢えてゲイ・フォビアを装うことがある。

 ナチスによる同性愛者弾圧の背景には、実はヒトラー自身が同性愛者だったがため、“真実”の露呈を極度に恐れたヒトラーが、ドイツ中の全同性愛者を抹殺しようと図った──との異説がある。

 完成した同性愛者追悼碑はコンクリート製の箱形で、中央部にある小さな窓から中を覗き込むと、2人の若いゲイが親密な接吻を交わす映像を見ることができる。

 デンマークの造形作家ミカエル・エルムグリーンと、ノルウェーのアーティスト、インガー・ドラッグセットによるアートユニット「Elmgreen & Dragset」の作品で、オランダの映画監督トーマス・ヴィンダーバーグと、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「コーヒー・アンド・シガレット」などを担当したドイツの撮影監督ロビー・ミューラーの協力により制作された。

 現在、東京・新宿二丁目にあるコミュニティセンターaktaで、世界同時公開中の同映像が展示されており、無料で自由に参観できる(展示終了日は未定、開館は16時から22時、毎月第2日曜日休館)。なお、主催はタカ・イシイギャラリー。

 このゲイ青年たちのキス映像はモノクロで、追悼碑が建てられた場所で撮影されたという。短いモチーフがループして終わりなく続くのだが、巧みなデジタル編集処理によって、その繋ぎ目は全く判らない。一方、2人の背景が季節を巡って移り変わり、ときの流れが表現されている。その映像手法は見事と言うほかない。

■Pink Triangle

 同性愛者だとの理由だけで虐殺された幾万とも言われる犠牲者を想うとき、あれから70年近い歳月を経た今、彼/彼女らを追悼する碑にキスを交わすゲイ青年たちの映像が刻まれている事実は、深い慰霊の衝動を呼び起こす。

 追悼碑を訪れる人たちはこの映像を見つめ、あの暗い時代の狂気に戦慄を覚えるとともに、どんな性的指向に生まれようとも自由に愛し合えることの素晴らしさを、あらためて強く印象づけられるに違いない。

 ナチス強制収容所へ連行された同性愛者たちには、ピンク色の三角形が分類記号としてあてがわれた。1970年代に入り、欧米のゲイ・リベレイションが興隆するとともに、同性愛者たちは、かつての屈辱を逆手に捉え、そのピンクの三角形=Pink Triangle(Rosa Winkel)をゲイ・プライドのシンボルマークとして積極的に用いるようになった。

 唾を吐きかけられ、惨めに殺されていったナチス時代の同性愛者を分類していた記号は、今や同性愛者が同性愛者たる誇りのシンボルマークとして、僕ら(記者はゲイ)の胸を堂々と飾っている。

(記者:中井 伸二)

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