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2008年06月01日(日) 15時00分

世界も注目 カラスと電柱、仁義なき戦い朝日新聞

 電柱に巣をつくるカラスをいかに追い払うか。九州電力鹿児島営業所は切り札となる防護具を導入したものの、すべての電柱に設置するわけにはいかず、巣の撤去作業にも追われている。カラスと人のいたちごっこを米紙ニューヨーク・タイムズも紹介した。

電柱につくられたカラスの巣を撤去する九州電力の職員=鹿児島市山田町

電柱のてっぺんに設置されたツリー形のカラス防護具=鹿児島市内

 鹿児島市山田町の住宅地。電柱のてっぺんに昇降機に乗った九電職員が手を伸ばした。地上約10メートル。感電を防止する絶縁体つきのやっとこ(工具)で、直径約40センチの巣を取り除いた。巣はほとんどが枯れ枝だが、針金や金属製ハンガーが交ざっていると高圧線に触れてショートし、停電するという。

 九電によると、カラスの巣が原因の停電被害は営巣期の2〜5月に相次ぐ。鹿児島営業所管内だけで05、06年度に5件ずつあった。

 しかし、07年度は2件に減った。鹿児島営業所が06年に採用した防護具が効果を上げたとみられている。

 その防護具はクリスマスツリーのような形をしている。プラスチック製で高さ50センチ、幅40センチ。巣がつくられそうな場所に置いて、カラスの侵入を防ぐ。設置した電柱420本の約9割に巣はできなかった。

 カラスが近づかないようプロペラをつけて回転させたり、カラスが嫌がるとされる黄色のカバーで覆ったりといったこれまでの対策より効果は大きかった。開発したヨツギ(大阪市)によると、07年度には全国の電力会社が約5千個も購入したという。

 だが、鹿児島での巣の撤去数は減ってはいない。05年が87個、06年が121個、07年が229個で、今年も5月上旬までに127個。カラスは防護具のない場所を選んで巣づくりをしているようで、防護具の合間に強引に巣をつくるケースもあった。

 ほかの電力会社もカラスには手を焼いており、知恵を絞っている。関西電力は、止まっても滑りやすいプラスチックで覆った電線に。東京電力は電線の周りに糸を張り、カラスが電線に接近しにくいようにした。四国電力徳島支店は、あえて巣づくりをさせる作戦で、電線から離れたところに合成樹脂製の網状カゴの巣づくり台を設けた。

 だが、いずれも効果は万全ではないという。

 「日本はカラスの群れと闘っている」。ニューヨーク・タイムズは7日付電子版に、こんな題の記事を載せた。東京支局の米国人記者が鹿児島など各地の攻防を取材。「職員を本当の巣から離そうと、おとりの偽の巣までつくり始めている」とカラスの生態を描き、「カラスは人間に勝っているようだ」と評した。(小川直樹)

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http://www.asahi.com/national/update/0531/SEB200805310006.html