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2008年06月01日(日) 12時00分

マンゴーバブル?2個20万円 東国原知事もびっくり朝日新聞

 東国原英夫知事のトップセールスで全国区の人気となった宮崎県産マンゴーが、出荷のピークを迎えている。4月の初競りでは、高級完熟マンゴーに過去最高の20万円(2個)の値が付き、今年も高値堅調だ。空前のブームに増産に乗り出し、沖縄など他産地も割安さを売りに追い上げる。一方、あまりの人気過熱に「マンゴーバブル」を警戒する農家も出てきた。(阿部彰芳)

宮崎市内の青果店が開いた宮崎産完熟マンゴーの格安セール。「太陽のタマゴ」が通常の半額程度で売られ、大勢の客が詰めかけた=宮崎市橘通西3丁目

 「それにしても20万円はすごい。県内も10万円というのは異常かなという感じはしますね」

 東京・大田市場の初競りで、マンゴーの最高級ブランド「太陽のタマゴ」についた過去最高額に、東国原知事は驚きを隠さなかった。

 太陽のタマゴは大きさや糖度などで独自基準を設け、全体の1〜3割程度しか収穫できない。同じ日の宮崎中央卸売市場でも10万円(2個)の値が付いた。30日現在、1キロ4千〜8千円程度で落ち着いているが、東京の市場関係者は「相変わらず品質がいい宮崎産の人気は高く、6月中旬以降はお中元需要で再び上がるだろう」と話す。

 初競りから5日後、知事にマンゴーを届けた生産農家代表、宮崎市の横山一徳さん(59)は「励みになる。ようやく夕張メロンに匹敵するブランドが生まれた」と喜んだ。

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 宮崎でマンゴー栽培が始まったのは85年。減反で野菜が生産過剰となり、その代替で導入された。

 生産農家8戸から始まった。最初の収穫は4年後。1キロ2千〜3500円で東京の青果店に持ち込んだが、結果は散々。店内に並ぶ外国産は数百円で、「そんなに高いマンゴーはいらない。メキシコ産で十分」とまで言われた。

 東京への売り込みは2年続けて失敗。生産者らは地元・宮崎での試食販売に切り替え、毎年街頭で呼びかけた。温度や湿度、摘花時期など品質管理も試行錯誤を重ねた。努力は実を結び、04年まで1キロ2千円台だった完熟マンゴーの平均単価は05年に3千円を突破。去年は東国原知事の宣伝で火がつき、4900円にまで達した。東京・日本橋の高級果物店ではいま、1500円の外国産を尻目に、太陽のタマゴが1個約1万〜2万5千円で中心に並ぶ。

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 それでも一時的な高値ではと、不安視する農家もいる。

 「安くても価格が安定する方がありがたい」。西都市で6年前からマンゴーを作っている日高直也さん(59)は、今年約10アールのビニールハウスを新築した。費用は国などの補助を引いて約600万円。新しい苗から収穫できるまでには数年かかる。「宮崎産は高すぎるというイメージが定着し、客が離れてしまわないか心配」と漏らす。

 マンゴー生産量1位は沖縄県。昨年の1キロ当たりの平均単価は3169円(東京の市場)で、前年より1200円高くなった。3位の鹿児島産は3086円(前年比約700円高)。いずれも値は上がっているが、2位の宮崎産よりは約2千円安い。

 JA鹿児島県経済連はマンゴーブームを歓迎としつつも、「太陽のタマゴは別格だが、通常の完熟なら味で宮崎産にひけをとらない。リーズナブルだと選んでくれる消費者は増えた」と差別化を図る。一方、沖縄の出荷ピークは宮崎が終わった後の7月。インターネットなどで農家が個人で売るケースが大半を占め、「出荷時期や流通のさせ方も違い、あまり気にしていない」(沖縄県園芸振興課)。

 JA宮崎経済連は今年、生産量を2割増やす計画を立てた。昨年急増した需要に供給が追いつかなかったためだ。県も09年度までに07年度より200トン増の1千トンの生産量を目標に掲げ、宮崎産の定着を図りたい考えだ。

 4月15日の生産者と東国原知事の懇談。トップセールスで一定の成果を上げたことと、高値感への戸惑いから「もうPRはいいんじゃないかと思うんですよ」と話を向けた知事に対して、横山さんはこう答えた。「ここでやめたら沖縄や鹿児島に追いつかれる。宣伝はしないといかん」

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 JA宮崎経済連によると、昨年の宮崎県産完熟マンゴーの販売実績は過去最高の約28億円。前年の1.8倍、10年前の14倍と急増した。生産量は順調に増え、昨年は10年前の約8倍にあたる561トン。生産量1位の沖縄県は1550トン、3位の鹿児島県は272トンだった。

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