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2008年06月01日(日) 03時04分

無期懲役囚が戦後最多、厳罰求める世論で仮釈放減少読売新聞

 無期懲役の判決を受けて刑務所に服役している受刑者(無期懲役囚)が、昨年末時点で1670人に達し、戦後最多となったことが法務省のまとめ(速報値)でわかった。

 昨年は89人の無期懲役囚が新たに入所したのに対し、仮釈放は3人にとどまり、仮釈放者の平均入所期間は初めて30年を超えた。

 凶悪犯罪に対して厳罰を求める世論や仮釈放者の再犯に対する社会不安が背景にあるとみられ、仮釈放を認めない終身刑の新設を巡る議論にも影響を与えそうだ。

 米国など一部の国が設けている終身刑は、仮釈放を認めていないが、日本の無期懲役は、10年以上の服役で仮釈放が可能となる。

 法務省矯正局によると、昨年末に全国の刑務所で服役していた無期懲役囚は1670人で、1998年末の968人に比べ、72%増えた。戦後の混乱期に治安が悪化した影響で1279人(1961年)まで増えた後、713人(84年)まで減少していただけに、最近の急増ぶりが際立っている。

 新たに入所した無期懲役囚の数も、90年代には年間20〜40人台で推移していたが、2003年に初めて100人を超え、昨年は89人に上った。これに対し、仮釈放された無期懲役囚は98年に18人だったが、その後の平均は年間9・5人で、昨年は3人にまで落ち込んだ。

 仮釈放者の平均入所期間も20年10か月だった98年以降、長期化する傾向が続き、昨年は31年10か月だった。無期懲役囚の今年4月時点での入所期間を見ると、40年以上が24人に上り、55年以上の受刑者も1人いた。

 刑務所は受刑者の受刑態度などを考慮して地方更生保護委員会に仮釈放を申請し、同委員会が悔悟の情や更生の意欲などを検討して仮釈放の可否を決定する。

 同省の調査では、06年に仮釈放中に事件を起こした元受刑者(有期刑、無期刑含む)は、殺人が4人、強盗が13人、傷害が25人に上った。法務省幹部は「厳罰化や再犯抑止を求める世論を背景に、仮釈放が認められにくくなり、事実上の終身刑化が進んでいる」と説明している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080531-00000052-yom-soci