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2008年06月01日(日) 03時03分

EU、市民の前科情報を共有へ 裁判の判断材料にも朝日新聞

 【ブリュッセル=井田香奈子】欧州連合(EU)は、全27加盟国の国民の前科の情報を交換するネットワークを創設する。ある個人が別のEU加盟国で有罪判決を受けた場合、量刑や犯した行為などをその人物の出身国に知らせ、照会すればその人物のEU域内での前科がすべてわかるようにする仕組みだ。

 裁判の際に、他国での犯罪も含めた常習性や悪質さの判断が可能になる。また、人の移動が自由なEUで、複数の国にまたがって犯罪が繰り返されるのを防ぐ効果も期待されている。

 新システムでは、加盟国は、外国籍の被告に有罪判決が出た場合、その出身国の司法当局に通知しなければならない。他の加盟国から自国出身の被告について前科の情報を求められた場合は、10日以内に通知する。

 EU域内には、幼女に対する性犯罪の前科があると子どもを世話する職業につけないなど、職業を制限する制度をもつ国がある。こうした制限にも他国から提供された前科情報を利用できる。

 制度創設のきっかけは、1組の男女が87年〜01年にかけてフランス・ベルギーで若い女性や少女7人を暴行・殺害した事件。男にはフランスで幼女への性犯罪の前科があり、仏国内では子どもと接触する職場での勤務が禁止されていた。しかし、犯行当時、隣国ベルギーの小学校で、子どもの世話役として働いていたことから、問題になった。

 犯罪記録交換の制度化案は05年に浮上したが、プライバシーに関して加盟国間の意見が分かれていた。欧州議会の市民の自由委員会は5月29日、関連法案を可決したが、犯罪記録の提供にあたっては、人種、政治信条、性的指向などの情報は提供しないなど、慎重な運用を求めた。

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