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2008年06月01日(日) 02時48分

生保、7社減収11社減益 不払い問題なお影響朝日新聞

 生命保険主要13社の08年3月期決算が30日出そろった。保険金不払い問題が影を落とし、国内大手を中心に7社の保険料収入が減収、本業のもうけを示す基礎利益は11社で減益となった。いまの顧客を維持して収入の目減りを抑えようと、増配競争も始まった。

 一般企業の売上高にあたる保険料収入の減少が目立ったのは国内系大手生保だ。9社の合計で16兆7600億円と、前期から3.5%減った。なかでも住友生命保険が13.1%、太陽生命保険が9.9%と大きく減少した。もともと高額の死亡保障保険の市場が少子高齢化を背景に縮小しているうえ、保険金の不払いがこれ以上増えないよう営業職員が契約内容の確認に追われたことが影響した。

 最大手の日本生命保険は、新契約の保険金の総額(新規契約高)が前期より43%少ない6兆4506億円。戦後初めて第一生命保険、住友を下回り3位に転落した。営業職員による契約確認の過程で、顧客から死亡保障額の減額や医療保険への乗り換えを求められたことなども響いたという。日生の筒井義信常務は会見で「徹頭徹尾、不払い問題の対応に努めた。厳粛に受け止めている」と述べた。

 新たな販売ルートとされる銀行窓口販売も、昨年末にあらゆる種類の保険商品の販売が解禁されたにもかかわらず、実績は低迷。住友の変額年金保険の新契約件数は前期の半分に落ち込んだ。

 基礎利益は、富国生命保険とアリコジャパンの2社を除く11社で減少した。保険料の減収に加え、変額年金の運用成績が悪化したために責任準備金積み立てが膨らんだ会社もあった。保有する株式から受け取る配当が増加するプラス要因もあったが、十分に補えなかった。

 サブプライム問題にかかわる市場の悪化の影響で、保有有価証券の含み益は13社の合算で9兆円以上減り、8兆7300億円となった。各社とも経営の健全性に問題はない水準だとするが、三井生命保険が96億円の当期赤字になったのも、証券化商品の損失増大が原因の一つとなった。

 契約者に約束した保証利回り(予定利率)に運用実績が及ばず、生保経営を長く苦しめてきた「逆ざや」は、日生と第一の2社が解消した。追加責任準備金を前倒しして積み増したためで、ほかの社も数年以内の解消を目指す。

 契約者への増配も目立った。新規顧客の獲得が難しいなか、現在の契約者を「守る」ことに重点を置くためで、日生、第一、明治安田、住友、富国の各生命保険は4年連続で引き上げを決めた。

 医療保険が中心の外資系や新規参入組は拡大傾向を保った。がん保険に強いアメリカンファミリー生命保険は4.2%、男性職員による営業が特徴のソニー生命保険は7.1%のそれぞれ増収だった。(鯨岡仁)

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