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2008年05月31日(土) 13時45分

丸紅架空投資会議 「LTT社に頼まれ」偽部長2人も出席産経新聞

 総合商社「丸紅」の偽造書類を悪用した架空投資問題で、280億円の投資話をめぐって今年2月、丸紅本社で開かれた米証券大手との会合に、丸紅の部長を装う部外者2人が出席していたことが30日、分かった。このうち偽の「財務部長」役をした男性(41)は産経新聞の取材に対し、「(投資を勧誘した)LTTバイオファーマの元社長から頼まれた」と事実を認めている。関係書類の偽造や2人の「偽部長」起用など、大がかりな“だまし”の手口の一端が明らかになった。
 「LTT社の元社長から『印鑑証明書が出るまでのつなぎ役をやってほしい』と頼まれて引き受けた。投資話が架空だとは思っていなかった」。財務部長役を引き受けた男性は一連の経緯をこう証言した。
 男性が出席したのは、2月下旬に東京都千代田区の丸紅本社会議室で開かれた米証券会社との会合。この証券会社には、病院を運営する法人と丸紅が契約を結んだと称し、病院再生事業への280億円の出資が持ち掛けられていた。
 男性は、投資勧誘を主導したアスクレピオスの元社長(46)やその親会社、LTT社の元社長(34)と業務を通じてかかわりがあったという。
 関係者によると、会議に先立ち、アスクレ社とLTT社の元社長、丸紅の元嘱託社員2人=3月に懲戒解雇=とともに、ライフケアビジネス部長役と財務部長役の男性2人が都内のホテルで打ち合わせをした。
 その際、アスクレ社の元社長は財務部長役の男性に、丸紅財務部長の肩書が入った偽の名刺数枚のほか、「会議で使ってくれ」と海外ブランド「ダンヒル」のメガネを手渡した。アスクレ社元社長はホテルで別れ、会議には出席しなかったという。
 また、男性は会議の前日、LTT社の元社長から送られた資料を基に、病院運営法人と丸紅が結んだとする基本合意書の原案を作成。翌日夕方の会議でLTT社元社長が米証券大手の担当者にこの書類を示した際には、法人の社長や丸紅の代表取締役の印鑑が押されており、すでに契約が交わされたことになっていたという。
 この米証券大手は、民事訴訟で丸紅と争っているリーマン・ブラザーズとは別の証券会社。この商談の前に、アスクレ社が主導する病院再生事業に数回にわたり計約200億円を投資し、全額償還されていたという。
 しかし、今回は1回で280億円と巨額の投資案件だったため、丸紅代表取締役の印鑑証明書を要求。LTT元社長側がこの印鑑証明を用意できなかったことなどから、投資を見送っていた。
 会議の数日後、リーマン・ブラザーズ側への資金の償還は焦げ付いた。男性は3月上旬、LTT社の元社長から一連の投資が架空だったと打ち明けられたという。
 男性は、「LTT社の元社長を信じていた。架空の契約だとは知らなかったが、今思えば、(会議当日に元社長から手渡された)契約書類のコピーにはパソコンの変換で出ない漢字や印影が黒塗りにされるなど不審な部分があった」などと話している。

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