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2008年05月31日(土) 10時00分

【トレンド】詳細報告!ウィルコム新製品発表会 「WILLCOM 03」は? 次世代PHSは?nikkei TRENDYnet

キーワードは「もうひとつの未来。」

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 2008年5月26日、ウィルコムが新製品の記者発表会を開催した。

 プレゼンテーションを行った同社代表取締役社長の喜久川政樹氏は冒頭で、6月中旬発売予定だった「WILLCOM D4」が7月中旬に発売延期になったことを陳謝。「ウィルコム、シャープ、インテル、マイクロソフトの4社で精力を傾けて開発を行ってきたが、全く新しい商品ということで当初の発売予定日に間に合わせることができなかった。発売を待ちわびていらした方々に深くお詫び申し上げる。本来であれば頭を丸めてお詫びするところだが、これ以上丸められないので、頭を下げるしかない」と述べ会場を和ませた。

 次に、本題の製品発表に移った。喜久川社長はまずこれからのウィルコムのキーワードとして「もうひとつの未来。」を掲げた。そして、太平洋に浮かぶガラパゴス諸島の写真を見せ、「日本のケータイ業界は非常に高度な進化を遂げたにもかかわらず、日本だけで独自の進化をしてしまったことから、ガラパゴス諸島に例えられる。

 しかし今後ウィルコムが目指すのは“ガラパゴスケータイ”ではないことをはっきりとさせておきたい」と述べ、ウィルコムの目指す方向性として、(1)生活密着型(2)スマートフォン(3)次世代へつながる端末の3つを挙げた。これらは、以下の座標軸のように、縦軸に「端末の性能」、横軸に「日常的利用」を取り、エリアを4つに分けた場合の左上に属すガラパゴスケータイを除く3つのエリアにおける方向性を示すものだ。具体的なソリューションは次ページ以降の通り。

(1)生活密着型

 (1)生活密着型においては、昨年発売の京セラ製「HONEY BEE」のブルーシールアイスクリームとのコラボレーションモデル、PHSのモバイルFeliCaへの対応の2つを発表した。

 まずHONEY BEEについてだが、喜久川社長は「販売台数について非常に面白い現象が起こっている」と述べ、「通常は3月と4月に新規加入者数が増加し、逆に5月は落ちる傾向にあるが、HONEY BEEの場合、その数が5月になってもほとんど変わっていない。この現象の要因として、総合満足度が80.2%と高いことが挙げられる。特にデザイン満足度に関しては98.5%と驚異的な数値を示している。これは生活密着型という点において、生活に非常にマッチするデザインであることの証明だ」と説明した。

 そこで、今回、夏のライフスタイルを意識し、今年50周年を迎える沖縄のアイスクリームブランドであるブルーシールとコラボレーションモデルとして「S.Fチョコミント」「クッキー&クリーム」「ミルクチョコチック」の3カラーを開発。7月下旬発売予定だ。

 次に、モバイルFeliCa対応についてだが、今年度4半期を目処にFeliCa対応PHSの発売を予定しており、5月26日現在の導入予定サービスは、QUICPay、全日空、JAL、モバイルSuica、Edyの5社。「FeliCaは生活密着型を目指す上では必要不可欠な機能。FeliCaはもはやおまけ機能ではない」と喜久川社長。

(2)スマートフォン

 次に(2)スマートフォンについてだが、喜久川社長は「スマートフォンは今回の発表における目玉」と前置きし「SmartPhone to the Next Stage.」を宣言した。

 現在、日本のスマートフォン市場におけるウィルコムのシェアは69.2%と、圧倒的な高さを誇っており、自他共に認めるスマートフォンの第一人者であるが、今回、初代機種「W-ZERO3」、2機種目「W-ZERO3[es]」、3機種目「Advanced/W-ZERO3[es]」に続く第4機種目として、「WILLCOM 03」を発表した。これはW-ZERO3シリーズの集大成となるもので、基本性能である通話、メール、ウェブの3つの機能を強化。ネーミングに関しては、W-ZERO3のDNAを受け継ぐモデルとして「ゼロスリー」を生かしたとのこと。OSには日本初となるWindows Mobile6.1を搭載している。

スマートフォンにおける不満点とは?

 これまでスマートフォンに関しては、約68.3%の人が満足、もしくはどちらかというと満足しているとの結果が得られているが、逆に32.7%の人が不満を抱えていた。不満の理由としては「バッテリーがすぐ切れる(44.5%)」「端末価格が高い(32.4%)」「一般の携帯電話より大きい(31.9%)」「一般の携帯電話より重い(31.6%)」「データ通信料が高い(30.6%)」「ワンセグやおサイフケータイなどの機能がない(28.2%)」「操作性が悪い(26.8%)」などが挙がっており、今回発表のWILLCOM 03では、これらの不満を解消することに努めた端末に仕上がっているとのこと。

大きさ、重さに対する不満点を解消

 まず、WILLCOM 03の特徴として、喜久川社長は「Stylish」「Small」「Smart」の3つを挙げた。

 Stylishとしては、既存の3機種がビジネスコンシューマー向けでカラーもブラックとホワイトが中心だったのに対し、WILLCOM 03では、より一般コンシューマーを意識しカラーバリエーションもピンクトーン、ライムトーン、ゴールドトーンの色鮮やかな3色を用意。従来のスマートフォンとは一線を画したモデルになっている。また、フルフラット・サーフェイスも特徴だ。

 SmallとSmartに関しては、高さ116mm×幅50mm×厚さ17.9mm、重さ135g(充電池含む)と、アドエスに比べ、大幅な小型化、スリム化を実現。これにより、これまでの不満点のうちの「一般の携帯電話より大きい」「一般の携帯電話より重い」という2点の解消に成功したとしている。

操作性に対する不満点、料金に対する不満点を解消

 また、今回新たに「2モードイルミネーションキー」「タッチパネルコミュニケーション」というユーザーインターフェイスを用意し、「操作性が悪い」という不満の解消に努めた。それに伴う電話、メール、ウェブという3つのコミュニケーション機能の進化として、電話帳の使い勝手の向上、誰でも簡単にセットアップし利用可能なメール機能、人気ポータルのアイコンをクリックするだけでダイレクトアクセスが可能なウェブなどを挙げ、デモンストレーションを交えながら紹介した。

 一方、「データ通信料が高い」という不満に関しては、WILLCOM 03を「ウィルコム定額プランを際立たせる製品」と表現した。さらに、「バッテリーがすぐ切れる」については、連続通話時間360分、連続待受時間420時間に成功。「他社の機種に比べても、かなり効率が向上している」(喜久川社長)とのこと。「端末価格が高い」という不満点においても「W-VALUE SELECT」を提示。このサービスを利用すれば、月額1480円の負担額で購入できるとのこと。残る「ワンセグやおサイフケータイなどの機能がない」に関しても、FeliCaには対応していないものの、今回ワンセグに対応している。これらの対応により既述の不満点に関してはすべて解消したとしている。

(3)次世代へつながる端末

 さて、最後の(3)次世代へつながる端末についてであるが、喜久川社長は「ウィルコムがBWAで目指すシステムスペック」として、「伝送速度」「モビリティ」「安定性」「進化する技術」の4項目について言及した。伝送速度に関しては、上下それぞれ最大100Mbps以上を目指しているほか、さらに2〜3倍の速度向上に向け研究開発を推進中であり、モビリティに関しては、時速300Km以上という新幹線並みの速さでのブロードバンド実現を目指しているとのこと。

 安定性に関しては、「カタログとの差を感じさせない安定した実効速度」を挙げたほか、進化する技術に関しては、「PHSと同様、16万局からなるマイクロセルネットワークという革命的な技術によって、進化・発展し続けることによる自由なブロードバンドの実現」を挙げた。なお、次世代端末(PHS)のサービスについては、来年3月か4月を目処に東京エリアに限定して先行開始し、次に同年10月に大阪、名古屋などにエリアを拡大。その後、2009〜2010年にかけて順次拡大していく計画だ。また、WiMAXに対する次世代PHSのアドバンテージとしては、「テクノロジーの方向性は同じだが、10年間培ってきたマイクロセルの技術を活用していること」を挙げた。

次世代PHSのサービスブランドネームは「WILLCOM CORE」

 最後に喜久川社長は、ウィルコムが今後拡大を目指す領域として、AIR-EDGEやWILLCOM 03の担当領域となる「モバイルブロードバンド」、ADSL・FTTHにならぶ第3のアクセスとなる「ワイヤレスブロードバンド」、そして「新しい領域」の3つを示した。特に3つ目の新しい領域に関しては、オープンインフラ、オープンデバイスがもたらす新しいユビキタスの提案としては、定点カメラとPHSの基地局との連携など、映像による簡単なデモンストレーションを行った。

 そして、これら3つの領域において、次世代PHSのサービスブランドネームとして「WILLCOM CORE(=Communication Of Revolution & Evolution)」を発表。次世代のネットワーク、サービスを実現し、ユーザーのコミュニケーションやビジネスの「CORE」となるプラットフォームを目指していくと述べ、プレゼンテーションを終らせた。

 なお、ウィルコムは5月27日と28日の両日、東京ミッドタウン内のホール&カンファレンスにおいて、「WILLCOM FORUM & EXPO 2008」を開催し、そこでは、喜久川社長の基調講演をはじめ有識者による特別講演や各種プレゼンテーションが行われる。

(文/山田久美)

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