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2008年05月31日(土) 15時02分

震災が名付け親 新しい命、強く育てと願い朝日新聞

 【什ホウ(中国四川省)=柿崎隆】中国・四川大地震で被災した什ホウ(じゅうほう)=ホウは方におおざと=市で、妊婦たちが避難した「羅漢寺」境内にテントの「仮設産院」が設けられ、新しい命が次々誕生している。地震発生翌日の13日朝に最初の子が生まれ、31日までに計38人。地震にちなんだ命名が多く、「震災の中で生まれたことをずっと忘れず、強い人間になってほしい」という願いがこめられている。

「仮設産院」で29日に生まれた趙震生ちゃんと母親の竜暁雲さん=31日、日吉健吾撮影

 被災した住民が続々とこの寺に逃れていた12日午後4時ごろ、近くの公立の産婦人科医院から16人の妊婦が運ばれた。最初は寺の中にいたが、余震を警戒して外へ。まだテントもなく、机を二つ並べただけのベッドで、21歳の妊婦の分娩(ぶんべん)が始まった。13日午前7時36分、女の子が誕生。元気な産声に、避難者であふれていた境内から大きな拍手と歓声がわいた。赤ちゃんは「震生」と名付けられ、母子ともに元気に退院して郊外の街に出たという。

 多くの地域で妊婦たちが大都市の病院に移される中、仮設産院の医師たちは避難所内での助産を続けた。「被災した妊婦たちは里帰り出産や実家暮らしが多く、都会に行っても不安だろう。自分たちの信頼関係でやっていきたい」との思いからだ。

 地震にちなんだ命名が多くなり、「震」の字を分解して「雨辰」と名付けられた男の子も。日本人の氏名にはなじみのない「震」だが、「多くの人に助けてもらって生まれた感謝の気持ちを絶対忘れないでほしい」「大きく育ってほしい」「困った人を助けられる人に」といった思いが込められているという。

 現在は赤ちゃん5人が入院中。29日に生まれたばかりの男の子も、氏名は「趙震生」に。母親の竜暁雲さん(27)は「先生を信頼していたので、ここで産んだ。震災の中で生まれた喜びをかみしめて夫が名前を付けました」と我が子を抱きしめた。

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