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2008年05月31日(土) 11時26分

「政権変われど、アジアへの関心は不変」米国防長官朝日新聞

 【シンガポール=梅原季哉】アジア太平洋歴訪中のゲーツ米国防長官は31日、シンガポールで開かれている「アジア安全保障会議」(英国際戦略研究所主催、朝日新聞社など後援)で演説した。民主・共和のどちらの党が次期米政権についても、「米国がアジア太平洋地域に寄せる関心が強く永続的であることは変わらない」と、アジアの地域安全保障に前向きな形で関与し続けることを保証した。

 米国が今年から09年にかけての政権移行期は特に、イラクやアフガニスタンでの「テロとの戦い」の疲弊もあってアジアへの関心を失いつつあるのでは——というアジア側からの根強い懸念を解消することをねらったものだ。

 長官在職約1年半で、今回のアジア訪問が4度目になることや、自身が民主・共和両党の7政権で公職にあった経験を引き合いに出し、「米国がアジアへの関心を失いつつあるという説は、ばかげているか、不誠実な動機からのものだ」と言明した。

 ゲーツ氏は同時に、米国がより建設的な関与を始めた例の一つとして、中国との間で防衛当局間のホットライン開設にこぎつけたことを挙げた。「共通の問題に対処する枠組みを通じて協力する傾向ができている」と指摘、その例として、北朝鮮の核兵器をめぐる6者協議に言及した。次期米政権も「北朝鮮を抑制する課題を引き継ぐことになり、それには中国の貴重な協力が不可欠だ」と強調した。

 逆に、米国が近年、中国の軍事力についての懸念を表明する材料となってきた、資源獲得をめざす圧力による外交や、透明性の欠如といった問題については、中国を名指しで批判することは避けた。問題自体は引き続き指摘したものの、「中国側との対話をわざわざ対立的な空気の中に置きたくない」(国防総省高官)と、中国の体面に一定の配慮を示した形だ。

 一方、日米関係については「成熟した同盟関係」の代表例として挙げた。演説に続く質疑応答の中でも「ブッシュ政権がアジアで残す遺産は何か」と問われると、まず「15年間政府から離れていた私が公職に戻って強く印象を受けたのは、日米安全保障関係の著しい改善だ」と答えた。

 沖縄の米軍基地再編を受け海兵隊の戦闘部隊がグアムへ移転する計画に関して「日本からの支援を得て即応態勢を整える」と述べ、アジア諸国から歓迎する声が出ていることを指摘。軍事施設増強が多国間協力を視野に入れたものになることを強調した。

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