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2008年05月31日(土) 00時59分

ミツバチを渡り鳥の用心棒に カラス対策で実験開始朝日新聞

 絶滅危惧(きぐ)種の渡り鳥コアジサシをカラスから守るため、自然保護団体と東京都が、営巣地になっている羽田空港近くの都の下水処理施設屋上に、ミツバチの巣箱を置く実験を始めた。黒色のものを攻撃するというハチの特性をいかし、卵やひなを狙うカラスを近づかせないのが狙いだ。

森ケ崎水処理センター(当時)屋上でヒナを育てるコアジサシ=02年6月、東京都大田区

 7年前、東京都大田区にある都下水道局の森ケ崎水再生センターの屋上でコアジサシの巣が見つかった。現在は、ほぼ屋上全体が営巣地になっていて、その面積は約6.2ヘクタール。保護団体のNPO「リトルターン・プロジェクト」によると、近くの浅瀬には繁殖に必要なエサとなる小魚が多く、年250〜4千羽が春になると南から飛来してくるという。

 しかし、コアジサシの脅威は都会のカラス。03年7月には60羽ほどのカラスに襲撃され、約300個の卵や約160羽のひなが食べられた。カラスが嫌うテグス糸を周囲に張りめぐらしたり、れんがを積んでひなの隠れ場をつくったりしてきたが、効果的な手だてがないのが実情という。

 一昨年、都下水道局の担当者が「ミツバチがカラスを追い払うのでは」という話をテレビで聞き、東京・銀座のビル屋上でミツバチを飼育するNPO「銀座ミツバチプロジェクト」に相談した。

 ミツバチプロジェクト世話人の田中淳夫さんによると、ミツバチを飼っている銀座のビル近くの神社では以前、白い皿がカラスに割られる被害があったが、ミツバチを飼うようになってからはカラスを見かけなくなったという。

 二つのNPOと都が昨夏、三つのハチの巣箱を置いたところ、とりあえずミツバチとコアジサシは反目することがなかった。今年は営巣地の一角に1万〜2万匹のミツバチがいる巣箱を数箱置き、他の場所とコアジサシの営巣状態を比べ、カラス対策への効果を検証する。田中さんは「ミツバチが希少種を守る一助となれば」と期待している。(野村雅俊)

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 〈コアジサシ〉 体長約30センチのカモメ科の渡り鳥。オーストラリアなどから4月ごろに飛来。砂浜などに巣をつくり、子育てをして夏ごろに南へ飛び立つ。土地造成やレジャーを楽しむ人による巣の破壊、カラスなどによる捕食が各地で報告され、環境省レッドデータブックで「絶滅危惧2類」に指定されている。

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