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2008年05月31日(土) 00時00分

歌い継ぐ母の声 がんで逝く前、CD作製 京丹後の主婦朝日新聞

 胃がんのため昨年8月に36歳の若さで亡くなった京都府京丹後市の主婦村岡美佐恵さんが、8歳と6歳だった我が子に歌を残した。CDに収められた「My Angel」はいま、地元や兵庫県のコーラスグループが合唱したり、地域のFM局が流したりするようになった。

 美佐恵さんが胃の痛みを訴えたのは06年3月ごろ。4月に胃がんと診断された。6月、夫の勝彦さん(38)に「写真はたくさんあるけど、声はなかなか残れへん。子どもたちに声を残したい」と切り出した。1週間後、勝彦さんに歌詞を見せた。「そばにいるよ あなたの心の中で」「とまどい苦しみつまづいたら 母に語りかけて すべて受け止めるから」といった言葉がつづられていた。

 美佐恵さんの中学時代の友人がおだやかな曲をつけてくれた。ピアノに合わせて美佐恵さんが歌い、勝彦さんと長女真帆ちゃん、長男将吾君がコーラスで参加。見舞いに来てくれた人へのお礼にと、500枚のCDを作った。

 06年8月に胃の全摘出手術を受けたが、1年後に亡くなった。死後、真帆ちゃんと将吾君が通う京丹後市立湊小学校のPTAのコーラスグループが歌うようになった。美佐恵さんの友人だった女性は「子どもに語りかけるように歌っている」。

 美佐恵さんの親族が所属する兵庫県姫路市の女声コーラスグループ「ソングストリス」も2月、発表会で歌った。指導した葛川結子さん(38)は「子を思う母の気持ちに涙が出そうだった。難しくて合唱には向かないと思ったけれど、メンバーに母親が多く、自分の身に重ねて歌った」という。

 同県豊岡市のFM局「FMジャングル」でも紹介された。DJを務めた橋本佳代子さん(32)は「美佐恵さんにあったことはないけれど、この歌を聴くと元気が出る。彼女の声がたくさんの人に届いてほしい」と話した。

 美佐恵さんの死後、泣いてばかりいた真帆ちゃんと将吾君も、時折この歌を口ずさむようになったという。(玉沢綾子)

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805310112.html