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2008年05月31日(土) 00時00分

後部座席のシートベルト義務化 6月1日から改正道交法朝日新聞

 6月1日から車に乗っている人は全員がシートベルトを着用しなければならなくなる。違反すると、運転者が行政処分点1点を付けられるだけに、「客商売」のタクシーやバス業界の悩みは深い。高齢者を送り迎えする介護事業者などにも波紋が広がっている。

タクシー各社は後部座席にステッカーを張ってシートベルト着用を呼びかけている 大阪府警は、後部座席のシートベルト着用が義務化されることを知らせるチラシを配った=31日午前、同府吹田市の名神高速道路吹田サービスエリア、机美鈴撮影

 「後部座席もシートベルト!」。30日、大手タクシー会社「日本交通」(大阪市西区)では、後部ドアの内側にステッカーを張っていった。後部座席の背もたれの下にしまい込んでいたシートベルトの留め金を引き出し、乗車時に乗客に注意を促すよう運転手に指導しているという。

 南海難波駅前。客待ちをしていたタクシーの運転手(57)は「助手席でも着用する人は1〜2割。酔ったお客さんに絡まれたら怖いし、うまく言い出せるか……」。JR大阪駅前にいた運転手(45)は、疲れて座席で横になる客をたくさん見てきた。「せめて自宅までゆっくり寝かせてあげたい。複雑な心境」と話す。

 乗客の反応は分かれる。会社員男性(35)は「運転するときは必ずシートベルトをしてますから。後部座席でも慣れの問題ですよ」と気にしない。だが、雑貨店アルバイトの女性(22)は「お酒を飲んだ後くらいはゆったりしたい。ベルトをしたら彼の肩にもたれられへんし」。

 観光バスのバスガイドも例外ではない。「阪急観光バス」(大阪市北区)は、ガイドも原則として座席で、客に背を向けたままで案内することにした。走行中に飲み物を配るサービスも取りやめる。担当者は「くつろいで旅をしてほしいと思う私たちには厳しい法律だ」とこぼす。

 警察の取り締まりは当面、高速道や自動車専用道路に限られるが、一般道も注意や警告の対象。波紋は運輸業界以外にも広がる。

 ワゴン車などで高齢者を送迎している大阪市生野区の通所介護(デイサービス)業者は、「足や腰に持病があって、ベルト着用を『しんどい』といやがる人もいる。できるだけ従うが、一律に運用されると正直困る」と言う。

 大阪都島自動車学校(大阪市都島区)も1日、生徒を送迎するバスの座席の背に「シートベルト着用が義務化されました」などと記したステッカーを張り付ける。担当者は「ドライバーを目指すのだから、全員が着用してくれると期待しています」。

 大阪府警は31日、同府吹田市の名神高速道路吹田サービスエリアで、「後部座席のベルト未着用の場合、致死率は4倍!」などと書かれたチラシをドライバーらに手渡した。摘発するのは当面は悪質な場合に限るという。

 府警幹部は「自分を守り、運転席や助手席の人も守ることになる」と話している。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805310006.html