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2008年05月31日(土) 02時59分

アフリカ 未来へ学ぶ 共同体学校の挑戦朝日新聞

 最果ての村に、学校ができた。国にはつくれなかった。だから、村人がつくった。

80万人以上が住むケニア最大のスラム、キベラ。バラック長屋が立ち並び、衛生状態も良くないが、貧しいながらも助け合って生きる姿は、どこか懐かしさを感じさせる。坂を駆け上がる少年の向こうに虹がかかっていた=ナイロビ、飯塚晋一撮影

  

 質素な土間の小さな教室に、小学1年生49人がひしめき合う。「僕はアリ君とボール遊びをします」。公用語の仏語の読み方の授業中。

 みな学校には、持っているなかでもきれいな服を着てくる。年齢「7歳ぐらい」の少女アワ・ジャロさんも、銀色のピアスとビーズの腕輪で着飾っていたが、腰巻きは穴が開いて泥だらけ。貧しさは隠せない。それでも「毎日学校が楽しみ」とうれしそうだ。

 西アフリカの内陸国マリ。コートジボワール国境に近いゴンコロニ村は、雨期には道路が荒れて交通が途絶する。昨年11月、ここに初めての小学校ができた。村人が資金と労力を出し合って運営する、共同体学校である。

 公立小学校に通うには、炎天下を片道3時間歩かなければならない。弁当代を出せる余裕のある家庭は少ない。近年、公立校はまったくつくられず、村人は2年前、自前の学校建設を決めた。

 綿花生産で積み立てた非常時用の資金を取り崩した。校舎の壁塗りも、黒板作りも、村人自らやった。教師は、県都コロンディエバから月給3万2500フラン(8千円余り)、住宅・食事付きで招いた。学校運営委員のドナンティエ・コネさん(40)は「私たちの苦労を子どもらに味わわせたくなかった」と話す。

 こうした共同体学校が農村部で増えている。国連機関や国際援助団体が支援する。

 ゴンコロニの北約80キロ、ミサラカ村のアダマ・コネ村長(76)は学校建設に大賛成した。自らは学校に通ったことがない。仏語が話せないのが、いまも悔しい。

 男児は畑仕事、女児は家事。村で子どもが重要な労働力であることは今も変わらない。しかし、学校に通い始めた子どもたちには苦にならないようだ。ミサラカ村共同体学校6年生のムハマド君は「毎日牛飼いの手伝いもするけど、学校が好き。いろんなことを知ることができるから」。

 マリは最貧国の一つ。識字率23%、就学率61%は世界最低レベルだ。低賃金で身分も不安定な公立校教員に不満は強く、教育制度は崩壊状態にある。国の失敗を、共同体学校が埋める。ただ、共同体学校も問題の根本解決ではない。

 支援する援助団体セーブ・ザ・チルドレンのママドゥ・トラオレさんは「国が何もしてくれない以上、自ら動くしかない」と言う。(ゴンコロニ〈マリ南部〉=国末憲人)

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