記事登録
2008年05月31日(土) 00時00分

高松塚壁画、今後は? 一般公開の見学者100人に聞く朝日新聞

 奈良県明日香村で31日から始まった高松塚古墳の国宝壁画の一般公開(事前申込制)に合わせ、朝日新聞社は、この日の見学者109人に今後の壁画の保存や公開方法についてアンケートを実施した。カビなどの影響で劣化し修理中の壁画の今後の扱いでは、修理後に古墳に戻すことに賛成が約5割、反対が約3割を占めた。文化庁に対しては、約7割が壁画や関連情報の一層の公開を求めた。

 一般公開は今月8日まで。初日は約380人が訪れた。

 文化庁は当初、最低10年をかけて壁画を修理した後、カビの発生しない環境を確保した上で古墳に戻す方針を示した。しかし、カビが再び発生する可能性を指摘する専門家も多い。同庁は近く、検討組織をつくるなどして最善の方法を探る方針だ。

 修理後に壁画を古墳に戻すかどうかについて「賛成」は52人。理由として、大阪府東大阪市の会社員天野晶一さん(58)は「埋葬された人はさぞかし高貴な人だったはず。元に戻さないと1300年前の人とはいえ浮かばれない」、奈良県生駒市の北江宏さん(64)も「環境や立地条件によって埋葬当時の世界をより想像しやすくなる」などと話した。

 一方、「反対」は30人。大阪府河内長野市の会社員山崎育子さん(51)は「元に戻すと劣化が進む上、狭い古墳内では一般の人が見られなくなる」、大阪府豊中市の浅田俊雄さん(63)は「戻すと劣化がひどくなる。墓はレプリカをつくって復元すればいい」と指摘。壁画の状態を良好に保つため、古墳の外で保存するのはやむを得ないという理由を挙げた。

 「どちらとも言えない」は27人。奈良市の主婦北村潤子さん(44)は「お墓なので戻すのが自然だが、未来の子どもたちにも見せてあげたい」と複雑な心境を語った。

 文化庁に最も望むことを尋ねた質問では、「一般公開の機会増」が44人で最多。次いで「修理の進捗(しんちょく)具合などの情報公開」で31人だった。「壁画の完全な修理」が26人で続いた。

 「飛鳥美人」(女子群像)と対面した印象を質問したところ、「感動した」が約7割の76人。一方、「がっかりした・残念」は19人、「普通・予想通り」は14人にとどまった。

 アンケート結果について、文化庁の山崎秀保・古墳壁画室長は「感動したという意見の人が多く、公開して本当に良かったと思う。近く開催する新しい検討会では、こういった一般の人の声を踏まえた上で、今後の壁画のあり方などを考えていきたい」と述べた。

http://www.asahi.com/kansai/entertainment/news/OSK200805310099.html