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2008年05月30日(金) 23時13分

韓国大統領、中国に押され気味 南北関係も改善見えず朝日新聞

 【北京=牧野愛博】韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は30日、4日間にわたる就任後初の中国訪問を終え、帰国した。低迷する支持率の回復を意識し、四川大地震の被災地を慰問するなど活発に動いたが、訪中の成果を見れば、中韓自由貿易協定(FTA)交渉の推進のように、実際は中国側に有利な合意が目立った。訪問中、対北朝鮮政策にも繰り返し言及。行き詰まった南北関係に悩む姿も印象づけた。

 韓国の合同取材団によれば李氏は30日、外国元首として初めて都江堰(とこうえん)など被災地を訪問。成都空港では援助物資を空輸した韓国軍C130輸送機を見て「(首脳会談で合意した)『戦略的協力関係』を端的に示すもの」と喜んだ。

 訪問は、27日の首脳会談で李氏が「良いときも困難なときも一緒にいるのが友人だ」と胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席を気遣ったことから実現した。会談で合意したFTAの推進も、中国側が強く望んでいたものだ。

 共同声明には、国連改革での緊密な協力を盛り込んだ。中韓は日本の国連安保理常任理事国入りに消極的だが、韓国高官によれば中国が共同歩調を要求。日韓首脳会談の直後だったこともあり難色を示す韓国を押し切ったという。

 経済的な実利を追求する李政権は、貿易額と投資額がトップを占める中国との関係を重視。さらに、成果が出ない経済政策など、不振の内政を外交で補おうと、訪中の成功に全力を注いだ。

 ただ、韓国政府が最大の成果とする戦略的協力関係も、具体的な内容ははっきりしない。外交当局間で戦略対話を始めるが、すでに次官級対話や安全保障協議などは始まっている。逆に07年4月に合意した両国海空軍間の「軍事ホットライン」設置は、依然、実現に至っていない。

 一方、李氏は訪中期間中、盛んに南北関係に触れた。28日の同行経済人との会合では「戦略的協力関係への格上げは、北韓(北朝鮮)にも有益だ」と発言。温家宝(ウェン・チアパオ)首相との会談では「北韓を苦しめる考えはない」とも語った。

 首脳会談では、社会の開放と非核化を前提に、北朝鮮の1人あたり国民所得を3千ドルまで引き上げる自身の「非核・開放3000」構想について、理念の説明だけにとどめた。同行筋は「構想に批判的な中国政府に配慮した」と説明するが、北朝鮮が激しく反発する中で、対北政策の微調整も模索しているようだ。

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