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2008年05月30日(金) 01時34分

沖縄県議選30日告示 後期高齢者医療制度が争点に朝日新聞

 沖縄県議選が30日、告示される。「保守対革新」の構図が残り、基地問題を巡って争ってきた様相が一変し、今回は後期高齢者医療制度が最大の争点に急浮上。圧勝した衆院山口2区補欠選挙の再現とばかりに攻勢をかける民主党に対し、与党は争点封じに必死だ。

  

沖縄県議選の掲示板が住民約30人の大神島に定期船で運ばれた。奥は宮古島=27日、沖縄県宮古島市沖、金子進さん撮影

 野党が提出した後期高齢者医療制度廃止法案が審議入りした29日、民主党の菅直人代表代行は記者会見で県議選に触れた。「選挙中に廃止法案の採決時期が重なる。『長寿の島』のみなさんが(制度に)強い反発を覚えている」

 1カ月前の山口2区補選では、同制度への批判が噴き出し、民主党候補が圧勝した。沖縄県議会の定数48のうち、現有議席は与党系が27で野党系は20(欠員1)。今回、与党系は引退などで立候補を予定している現職は18人だけ。野党4党は結束して同制度を争点化させ、与野党逆転を狙う。

 24日に沖縄本島中部であった民主党新顔の演説会場には制度を批判するのぼりが並んだ。応援に立った民主党の鳩山由紀夫幹事長は演説の大半を制度批判に費やし、「県議会で与野党を逆転させれば、その勢いは必ず国政に乗り移る」と訴えた。野党各党は党首クラスの幹部を投入し、福田政権批判を繰り広げる。廃止法案は投開票日直前の6月6日に野党多数の参院で可決し、通過させる方針だ。

 この勢いに焦った与党は、テコ入れに必死だ。自民党の二階俊博総務会長は27日に沖縄入りし、現職の総決起大会で「(同制度に)批判を受けているが、問題解決に努力する」。29日には古賀誠選挙対策委員長が入り、公明党県本部を訪ねて「厳しい状況だが、与党として頑張りましょう」と連携を呼びかけた。

 公明党の太田代表も23日に仲井真弘多県知事と会談し、「所得の少ない制度対象者には保険料を減免する」と制度の見直し案をアピール。29日に国会内で開かれた与党高齢者医療プロジェクトチームは、投開票日までに見直し案をまとめることを確認した。

 山口2区補選では、国政の課題を正面から取り上げず失敗した。そこで、自民党は30日から投開票日前日までの9日間、沖縄県内だけに流すCMを作り上げた。高齢者を後ろに並ばせ、浜田幸一元衆院議員が「自民党はおじいちゃんおばあちゃんを大事にする政党なんだろ」と訴える内容。党幹部は「補選では戦略がちぐはぐだった。CM制作はその反省もある」と語る。

 危機感は、仲井真知事にもある。今月2日の記者会見では、県議選について「私に対する評価そのものだと思っている。結果によって(県政運営に)強烈に影響する」と強調。5月に入ってからは連日、複数の立候補予定者の集会を回っている。

 就任から1年半。米軍普天間飛行場の名護市移設に向けて、3月に防衛省による環境影響評価の調査が始まった。着工前に知事承認が必要な公有水面の埋め立ては県議会の同意がなくても可能だが、県民に県内移転への反発は根強く、県選出の自民党国会議員は「野党側に一定の配慮をせざるを得ない場面も出てくる可能性がある」と懸念する。

 少数与党になれば、人事や予算、条例などを提案するたびに野党の攻撃を浴びて修正を迫られかねない。「足して2で割ったり、5で割ったりしなければならなくなる。思い通りにはいきにくい」。仲井真知事はそんな不安を周囲に漏らしている。(土居貴輝、蔭西晴子、山崎崇)

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