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2008年05月29日(木) 00時00分

脱線事故遺族ら約30人、JR西に集団交渉申し入れ朝日新聞

 JR宝塚線(福知山線)脱線事故で死亡した乗客106人のうちの約30人の遺族でつくる「JR福知山線事故賠償交渉の会」のメンバーが28日、大阪市北区のJR西日本本社を訪れ、集団交渉開始を申し入れた。遺族側は1カ月後をめどに1回目の交渉を設定するよう求めたが、JR側は明言を避けた。

 訪れたのは、同会幹事で、妻と妹を亡くした浅野弥三一さん(66)=兵庫県宝塚市=ら6人。JR西は土屋隆一郎専務(福知山線列車事故ご被害者対応本部長)ら6人が対応した。

 11日に設立した同会は、従来の慰謝料とは別に、遺族自身が亡くなった家族の「命の値段」を評価する新しいやり方を求めている。奪った命の重さをJR西に自覚させ、「組織的要因で起きた事故の特殊性」を浮き上がらせる考えだ。一方、JR西は、交通事故などと同じ「一般的な補償基準」を適用する姿勢を崩しておらず、交渉は難航も予想される。

 事故で死亡した人について、加害者から支払われる賠償金は、通常、逸失利益と慰謝料、葬祭費用を合計して算出する。逸失利益は67歳まで働き続けたと仮定して所得を計算、慰謝料には家族内の役割などに応じ、最高2800万円といった基準が裁判などで確立している。

 遺族には、こうした数式に従って機械的に賠償額を算出すると、亡くなった家族が家庭で果たしていた役割や将来性を十分反映できないとの疑念がある。浅野さんは「賠償額の大小ではなく理念の問題。『命の値段』を考えることは、その人が生きていた意味を見いだす作業。つらくても、残された家族がしなければならない」と話す。

 申し入れ終了後、JR西の土屋専務は「人身事故の一般的な補償基準を踏まえつつ、これを上回る補償をしている。申し入れの詳細を検討し、後日正式に回答させていただきたい」とのコメントを出した。(千種辰弥、吉野太一郎)

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805280094.html