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2008年05月29日(木) 15時17分

精神科医、総合病院離れ 病床2割減、閉鎖も相次ぐ朝日新聞

 地域の中核病院などの総合病院で、医師不足から精神科病棟の閉鎖が相次いでいる。02年から4年間で、精神病床がある病院数は1割、病床数は2割近く減った。総合病院の精神科は、通常の治療だけでなく、自殺未遂者やがん患者の心のケアなど役割が広がっている。事態を重く見た関係学会や厚生労働省は現状把握の調査を検討している。

  

 日本総合病院精神医学会の調査によると、02年に272あった精神病床を持つ総合病院は06年末に244に、病床数も2万1732床から1万7924床に減った。調査後も休止したり診療をやめたりする病院が続いている。

 廃止になっているのは主に地方の公立病院だ。自殺率が12年連続全国1位で自殺予防に取り組む秋田県でも、精神病床がある八つの総合病院のうち、3カ所が入院病棟を閉鎖中。非常勤で維持してきた外来診療も、大学医局の医師引き揚げで厳しい状況にあるという。宮崎県では、四つの県立病院に十数人いた精神科医が昨年末に3人になった。

 精神科専門の医師数は微増傾向だが、厚労省調査では、この10年で診療所と精神科病院に勤める医師数は増加したのに対し、総合病院などは1割減。夜間休日の救急対応などの忙しさから敬遠されたとみられる。また、他科より診療報酬収入が少なく、経営側に負担感が大きいという。

 厚労省は、精神障害者が入院中心から脱して地域で生活できるよう単科精神科の病床数削減の方針を打ち出した。一方、自殺未遂で入院した患者を精神科医が診察すると診療報酬が加算されたり、がん対策基本法で緩和ケアチームに精神科医の関与が求められたりと、総合病院での精神科医の役割は増している。

 水野雅文・東邦大医学部教授(精神医学)は「イタリアは精神科病院を全廃し、代わりに全総合病院に精神病床を置いた。日本は、精神科病院の病床削減は進まず、総合病院の病床が減るという正反対のことが起きている。総合病院の精神科医療の診療報酬を手厚くするなどの対策が必要だ」と話す。(佐藤陽、和田公一)

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