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2008年05月29日(木) 14時36分

ナルニア国物語「第2章カスピアン王子の角笛」公開中朝日新聞

 映画「ナルニア国物語」シリーズの「第2章カスピアン王子の角笛」が公開中だ。ナルニア国は前作で平和を取り戻したが、新作ではまた闇の世界に戻ってしまい、再び4人きょうだいが活躍する。アンドリュー・アダムソン監督は「主人公たちが幼さを過去のものとし、前進する姿を描いた」と語る。(高橋昌宏)

 原作は、英国のC・S・ルイスによる全7作のファンタジー小説だ。偉大な王アスランが創造し、不思議な生き物と魔法の国ナルニアに足を踏み入れた4人のきょうだいの物語。白い魔女を倒して冬に閉ざされた世界から解き放った映画第1作は、各国でヒットし、日本でも約68億円の興行収入を記録した。

 魅力として監督は二つ挙げた。「まず子供が力が持てること。幼少期は先生に指示されてばっかりだけど、ナルニアなら王や女王になれる」。自らも幼い頃に原作を読んで夢想した。

 「ルイスが神話を研究し、その要素を採り入れていることも大きい。神話には人間の悩みなどが普遍的に描かれている」。そう語るように、前回は善と悪の戦い、今回は人間と自然の戦いと、テーマが分かりやすい。

 今作は、4人が現実世界から1年ぶりにナルニア国に帰還。新たに同国を征服した民族の世継ぎでありながら、側近から命を狙われるカスピアン王子と出会い、迫害された先住の生き物のために戦う。

 撮影はニュージーランドなど4カ国で、7カ月間に及んだだけあって、迫力ある映像に仕上がっている。特にスリリングな戦闘場面は、黒澤明監督の「乱」とデビッド・リーン監督の「アラビアのロレンス」が参考になったという。「『乱』の戦場シーンはとてもエキサイティングで、しかも美しい」

 コンピューター・アニメーターや視覚効果のアドバイザーとして活躍しただけあって日本のアニメにも詳しい。「『千と千尋の神隠し』のようなダークで、重みのある作品でも、日本の子供たちが受け止められるのが衝撃だった」と感心する。「攻殻機動隊」や「AKIRA」にも影響を受けたという。

 監督デビュー作「シュレック」で、米アカデミー賞長編アニメーション賞を受けた。「ナルニア」の成功で、ヒットメーカーの評価が定着しつつある。もっとも本人の本音は「スケールの大きな作品が続いたので、今後は8週間で撮り上がるような小品をやりたいね」。

http://www.asahi.com/culture/movie/TKY200805290177.html