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2008年05月28日(水) 17時57分

ライブドア捜索当日、フジTV株売却も NHK職員朝日新聞

 ある職員は3年で5千回を超える取引をし、別の職員は事件の特報当日、勤務時間中に関連株を売っていた。NHK記者らによるインサイダー取引事件で、外部の第三者委員会が27日、公表したのは、株取引に励む役職員たちの姿だった。これで本来の業務ができるのか——。想像以上の株熱の広がりに、調査した委員も苦言を呈した。

 NHKの第三者委員会は、福地茂雄会長のもとに2月に設置された。弁護士の久保利英明委員長、弁護士の国広正氏、元共同通信常務理事の塚原政秀氏の3人を中心に、約3カ月かけて調査した。

 今回の調査でわかった株取引の多さに、委員のひとりは「勤務時間中にそんなに株取引をしていて、まともに仕事が出来るのか」と述べた。

 今回の報告では、06年1月16日、報道局社会部の記者が、フジテレビ株10株を売却していた事実も明らかにされた。東京地検が証券取引法違反の疑いでライブドアの家宅捜索に乗り出した日だった。

 当日、捜索のニュースはNHKが午後4時すぎ、大相撲中継を中断して特ダネとして報じた。社会部記者が売却したのは勤務中の同日午後0時半ごろで、原稿を編集・出稿する報道情報端末に元原稿が「防衛一報」というタイトルで入る約2時間前だった。

 10株の売却代金は計320万円で、記者はその直後にヤクルト株を約260万円で買いつけた。

 調査に対し、記者は「家宅捜索は知らなかった。この日になぜ売ったのかは偶然としか言いようがない」と説明。ライブドア事件の取材者ではなかったため、報告書は「何らかの方法で捜索の情報を入手した疑念は払拭(ふっしょく)されないものの、具体的な証拠はなく、問題事案とは評価できない」と判断した。

 インサイダー取引をして懲戒免職になった3人のうち、放送総局(東京)の元制作記者は資産を増やす目的で株取引を始めた。小銭稼ぎのため短期売買を繰り返し、「いざ始めると、損をしたくない気持ちから時間さえあれば勤務中でも携帯電話で株価をチェックしていた」と明かした。

 インサイダー取引が起きた原因について報告書は、「当事者の倫理観の欠如」などを挙げた。組織上の問題点について「相変わらず派閥抗争に明け暮れ、嵐の過ぎ去るのを待つだけという役職員も相当数存在する」と厳しく指摘した。

 再発防止策としては、報道情報端末にアクセス権がある職員や報道業務にかかわる職員の株取引全面禁止▽就業時間中の株取引禁止▽検証番組の放送——などを提言した。

 久保利委員長は「(06年の)日経新聞広告局社員によるインサイダー事件以降、報道各社はインサイダーへのケアを強めたが、NHKは遅れていた」と指摘。「今度はNHKが自力で再生することを期待したい」と語った。福地茂雄会長は「提言を真摯(しんし)に受け止め、今後の対策を練っていきたい」と述べた。

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 NHKは27日、今井環・報道局編集主幹が6月12日付で理事に就任し、日向英実・放送総局長が兼任している報道統括を担当する人事を発表した。

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