記事登録
2008年05月28日(水) 13時30分

船場吉兆が廃業 「のれんで営業、社会的に許されない」朝日新聞

 産地偽装などが相次いで発覚し、経営再建中だった高級料亭「船場吉兆」(大阪市中央区)は28日、経営再建を断念し、廃業することを明らかにした。湯木佐知子社長が同日午後、大阪市内で会見して発表した。大阪府警の強制捜査を受けて一時休止していた本店と博多店(福岡市)の料亭の営業を今年1月から順次再開していたが、客の食べ残した料理を使い回していたことが今月初めに発覚し、客離れがさらに進んでいた。

廃業を発表し、謝罪あいさつのあと涙をぬぐう湯木佐知子社長=28日午後1時5分、大阪市中央区、溝脇正撮影

船場吉兆博多店では、従業員に解雇通知書が配られた=28日午前10時45分、福岡市博多区、金川雄策撮影

 湯木社長は会見で一連の不祥事について謝罪し、「もはやこのような状況のもとで吉兆というのれんを用いて営業することは、社会的にも許されないものと考え、本日、この名称は自主的に返上することにしました」と頭を下げた。使い回しの発覚後、客の予約状況が半分から3分の1まで減ったことを明らかにした。代理人弁護士によると、本店での使い回しは14年前から続いていたという。

 船場吉兆をめぐっては昨年10月以降、福岡市の百貨店内にある天神店で消費・賞味期限切れの菓子や総菜を販売していたことが発覚。11月には本店でも贈答用商品などで九州産の牛肉を「但馬牛」と表示したり、ブロイラーを地鶏として客に提供したりしていた偽装が次々と判明した。

 大阪府警が同月、牛肉偽装について不正競争防止法違反の容疑で本店などを強制捜査。営業休止に追い込まれた。

 今年1月、民事再生法の適用を大阪地裁に申請。湯木正徳社長が辞任し、妻で女将(おかみ)の佐知子氏が新社長に就任した。大阪と福岡にあった計4店のうち本店と博多店の料亭の営業を順次再開したが、5月には、営業休止前に客が食べ残した料理を別の客に提供していたことが発覚。客離れが加速していた。

 「吉兆」は、料理人で文化功労者の故・湯木貞一氏が1930年に大阪市で創業。その子どもたちがのれん分けする形で、船場吉兆のほか「本吉兆」「神戸吉兆」「京都吉兆」「東京吉兆」が91年に設立された。五つの吉兆の間には直接の資本関係はない。

アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0528/OSK200805280006.html