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2008年05月28日(水) 19時50分

<ネット犯罪>「匿名性が高くても逮捕できる」 京都府警室長が捜査状況を報告毎日新聞

 コンピューターウイルスをファイル交換ソフト「Winny」を通じて配布した「原田ウイルス事件」を始め、ネット犯罪を精力的に摘発している京都府警の小山雅子・犯罪対策室長が、東京で開催された国際会議「ネット犯罪対策運用サミット」で最先端の捜査状況を報告した。小山室長は「(ハイテク犯罪では)逮捕に来た警官を見ても『まさか警察が来るとは思わなかった』という反応で、犯罪を犯したという意識が希薄だ。匿名性が高くても逮捕できることをアピールしたい」と意欲を示した。

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 小山室長は、ヤフーオークションを利用したフィッシング詐欺2件と、コンピューターウイルスをファイル交換ソフト「Winny」を通じて配布した事件を紹介し、ネット犯罪捜査の現状を報告した。。

 フィッシング詐欺のうち1件は、全国850人から1億2000万円を詐取した事件。複数で作業を分担した組織的な犯罪として京都、熊本、静岡の各府県警が協力し06年6月、不正アクセス禁止法違反、詐欺などの容疑で14人を検挙した。フィッシング詐欺を組織ぐるみの犯罪として摘発したのは全国で初めてだった。犯行グループはネットを通じて作業分担しており、面識はなかったという。もう1件は福岡、京都各府県警の連携で3人が検挙され、今年4月、主犯格の被告に懲役3年6月と罰金刑が科されたばかり。

 2件ともヤフーオークションIDとパスワードを詐取し、架空の出品をした。このうち、今年4月に判決が出た事件はより巧妙な手口で、犯人は人気掲示板に「限定販売」のお知らせを掲示。第1の被害者をフィッシングサイトに誘引し、詐取したID、パスワードを使って架空商品を出品する。架空商品を知らずに落札した第2の被害者からはクレジットカード情報を詐取。その情報を使って高額商品を落札し、立替会社が払った代金を詐取する。被害総額は数千万円に及んだ。

 原田ウイルス事件では、ウイルス作成自体を罰する法律がない。そのため、半年にわたって検察庁と討議を重ね、ウイルスに感染したパソコンのデータを破壊するのにアニメ画像を使っていることから、著作権法違反で逮捕に至った。

 小山室長は「(ハイテク犯罪では)匿名性が高いため犯行がエスカレートする。幅広い連携でネット利用者の安全を守りたい」と訴えた。

 インターネット犯罪の現状や課題を話し合う国際会議「ネット犯罪対策運用サミット」は、世界で約1700の企業・省庁などが参加する米アンチフィッシングワーキンググループ(APWG)主催。日、米、英、仏、中、韓などの警察関係者、研究者ら240人が参加した。【岡礼子】

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