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2008年05月28日(水) 00時37分

渋谷の妹殺害に懲役7年、遺体切断は無罪 東京地裁朝日新聞

 東京都渋谷区の歯科医師宅で06年12月、短大生の長女(当時20)を殺害し遺体をバラバラに切断したとして、殺人と死体損壊の罪に問われた兄の武藤勇貴被告(23)に対し、東京地裁は27日、殺人罪で懲役7年(求刑懲役17年)の判決を言い渡した。

 一方、秋葉康弘裁判長は、殺害数時間後に遺体を切断した当時の勇貴被告について、「精神障害により、別の獰猛(どうもう)な人格状態に支配されていた」として責任能力が問えない「心神喪失」の状態だったと認め、死体損壊の罪については無罪とした。

 公判では、弁護側が申請した精神鑑定医が「殺害時は自分の行動をコントロールする能力が著しく弱く、遺体損壊時は責任能力がなかった」とする鑑定結果を報告。責任能力が争点となり、弁護側は殺害、死体損壊のいずれも無罪を主張していた。

 この日の判決は、「鑑定結果は十分に信頼できる」とした上で、殺害時の責任能力について「自分の行動を制御する能力が減退していたものの、責任能力が限定されるほど著しいものとまでは言えない」と判断した。

 殺害の経緯については「衝動的に妹を殺害した」と認定。「被害者の挑発的な言動が犯行のきっかけになった側面は否定できない」としながらも、「人一人の命をうばった結果はあまりにも重い」と指摘した。

 また、遺体を切断した行為は「死体損壊の意図と作業過程は、隠すためということでは説明がつかない」とし、責任能力があったとする検察側の主張を退けた。

 判決後、勇貴被告の弁護人は「死体損壊を無罪としたのは率直に評価する。控訴については被告や家族と相談して決めたい」と述べた。

 精神鑑定が「心神喪失」の可能性を指摘し、責任能力が争点となった公判では、夫の遺体を切断したとして殺人罪などに問われた三橋歌織被告の判決で、東京地裁(河本雅也裁判長)は先月28日、完全責任能力を認めた。両判決とも、鑑定は信用できると認めたが、責任能力については、犯行前後の状況や被告の記憶など総合的に見た裁判長の判断で結果が分かれた。(河原田慎一)

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