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2008年05月28日(水) 00時00分

たばこ自販機成人識別カード「タスポ」利用進まず朝日新聞

 未成年者喫煙防止の切り札とされている成人識別カード「taspo(タスポ)」が広がらない。5月に導入された中国・四国地方では発行数が喫煙者の2割に満たないなか、カード不要のコンビニエンスストアでは客が増え「タスポ特需」に沸く。一方で、たばこ店側は客足減に加え、自販機の改修などにコストがかかり、来月スタートの近畿では店をたたむ業者も出始めた。

タスポに対応した自動販売機=23日、大阪市北区堂島、山崎虎之助撮影 タスポカード

 「ほとんど売れていないじゃないか」。JR岡山駅前でたばこ店を営む坪井耕平さん(60)は今月中旬、店頭の自販機を開けて言葉を失った。自販機をタスポ対応にした1日以降、売り上げはこれまでの約1割に急減した。

 同業者の中には、たばこの自販機を撤去したり飲料の自販機に変えたりした所もある。坪井さんは「期待したほどタスポを持つ人が増えない」と肩を落とす。

 タスポは電子マネーとしても使える名刺サイズのカードで、発行元の「日本たばこ協会」(東京)は年内に推定喫煙者の約4割にあたる1千万枚の発行を目指す。だが、タスポ取得には申請書への記入に加え、氏名、生年月日が確認できる運転免許証や健康保険証などのコピーと顔写真を協会に郵送することが必要で、導入済みの中国、四国、九州など計23道県の発行率は推定喫煙者数の17%(4月27日時点)にとどまる。

 こうしたなか、これまで通りたばこが買えるコンビニ店が活況だ。徳島市中心部のあるコンビニは今月、全体の来店客が1日当たり約2割増えた。店長(26)は「たばこに加えて缶コーヒーや新聞を買う客もいる」と笑顔を見せる。ポプラ(広島市)では、中国・四国地区の約300店でたばこの売り上げが例年より50%増え、全商品の売り上げも10%アップした。同社担当者は「これもタスポのおかげ」と喜ぶ。

 新たな出費を迫られる個人経営のたばこ店は苦しい。業界団体によると、製造から7年以上の自販機をタスポ対応にするには、買い替えた場合と同じ30万〜100万円がかかることもあるという。

 導入目前の近畿。大阪市大正区でたばこ店を経営していた男性(60)は2月、母の代から40年続いた店を閉めた。自販機販売が売り上げの中心だったが、「タスポ対応にすると数十万円の費用が必要な上、タスポが広がるかどうかも分からない」。

 全国たばこ販売協同組合連合会(東京)は「時間がたてば普及すると思うが、身分証明の義務づけはコンビニでもやるべきではないか」。

 タスポを入手する煩雑さの陰で「ライバル」も登場した。京都府長岡京市の自販機メーカー「フジタカ」は数十万人の顔の特徴をもとに、内蔵カメラで成人かどうかを識別する「顔認証機」を開発。東京の電子機器会社は、運転免許証で年齢を見分ける装置を今月末から出荷し、商機をうかがっている。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805270141.html