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2008年05月28日(水) 01時54分

急騰ガソリン、170円目前 元売り各社、6月値上げ朝日新聞

 石油元売り各社は6月から石油製品の卸値を1リットルあたり10円前後も引き上げる方針で、「ガソリン1リットル=170円」が現実味を帯びてきた。政府のエネルギー白書は原油高騰の主因として投機資金の流入を指摘。サブプライム問題で加速した投機の動きは依然活発で、原油高騰とガソリン価格上昇の圧力が弱まる兆しはまだ見えない。

 出光興産は27日、ガソリンの卸値を6月1日に1リットルあたり9.5円引き上げると発表した。6月からの値上げを28日に発表する新日本石油など他の大手の上げ幅は10円余となる見込み。レギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットルあたり160.1円(19日時点)で、卸値上昇分がそっくり上乗せされれば初の170円台となる計算だ。

 新日本石油やジャパンエナジーは毎月1回、卸値を改定するが、出光は月初めと月半ばの2回改定している。出光は今月半ばにも卸値を5円引き上げようとしたが、計画通り上げきれなかった。出光は直営販売会社の約400のガソリンスタンドに、この5円分を加えた14.5円、小売価格を上げるよう指導。相場全体を引き上げたいとしている。

 担当者は「(原油高騰で)利益が確保できない状況に追い込まれている」と話す。今回の9.5円の卸値引き上げは、原油調達コストに連動した通常の改定分7.7円に「諸コスト追加分」1.8円を上乗せした。直営販社のスタンドには「6月初めに一度は170円の看板を上げさせる」(出光関係者)と強い姿勢を見せており、「170円」の表示が現れそうだ。

 ガソリンの売れ行き自体は、価格高騰をきらった消費者の買い控えで、5月の消費量は前年同月より15〜20%減っている。在庫も250万キロリットルと過去最高水準で、1バレル=130ドルを突破した原油高騰を横目に、国内のガソリン小売価格は5月中旬から横ばいが続く。

 「元売り主導」で小売価格が再び上昇へ向かうのか。需要増を伴わない「悪い物価上昇」の代表例と言えるガソリン価格の動向は、景気にも影響を与えそうだ。

■政府、産油国に苦言

 政府は27日、07年度版エネルギー白書を閣議決定した。昨年来の異常な原油高騰は投機資金の流入が主因と指摘し、原油市場と金融市場の関係を「ますます強くなることが予想される」と分析。経済産業省は6月の5カ国エネルギー担当相会合で、主要消費国の懸念を表明する方向で調整している。

 甘利経産相は閣議後の記者会見で、1バレル=130ドルを超える現在の相場について「明らかに異常。産油国の危機意識が足りない」と苦言を呈した。

 白書は、07年後半の原油価格(1バレル=90ドル)のうち、需給のバランスによるのは50〜60ドル分程度で、それを上回る部分は投機資金の影響と試算。「原油価格は基礎的な価格から大きく乖離(かいり)している」と結論づけた。

 米国の原油先物市場の1日の取引高は約1500億ドル。年金基金やオイルマネー、中国など新興国の資金が政府系ファンドや機関投資家、ヘッジファンドを通じて流れ込んでいる。株式や債券など金融市場と比べて原油市場は小さく、金融市場から原油市場への資金シフトが「価格に大きな影響を及ぼす」と改めて強調した。

 一方、原油の需給バランスについても、アジアなどの経済成長を背景とする需要増もあって「引き続き逼迫(ひっぱく)した状況が続く可能性がある」と分析。産油国の余剰生産能力も「長期的には縮小傾向にある」と厳しくみている。

 5カ国会合はG8エネルギー相会合に合わせて青森市である。日米両国のほか、韓国、原油の消費が急増している中国、インドが参加する。(宮崎知己、久保智)

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