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2008年05月26日(月) 01時52分

欧州金融、損失が拡大 サブプライム、先行き不透明感朝日新聞

 【ロンドン=尾形聡彦】欧州の主な金融機関の08年1〜3月期の四半期決算が出そろった。サブプライム問題の影響で、欧州勢が依然として高水準の損失を出している傾向が鮮明になった。サブプライム問題がどこで峠を越すのかは依然、見通せない。

 「今年のこれから先を見通すのは、異常な難しさだ」

 英大手HSBCのグリーン会長は業績見通し発表の声明で、先行きの不透明さを認めざるを得なかった。

 欧州大手10社では、08年1〜3月期の損失額が約5兆4千億円。6兆円超だった07年の1年間に迫る勢いだ。

 特に損失額が大きかったのはスイス大手のUBS。08年1〜3月期の損失は190億ドル(約2兆円)と07年の約170億ドル(約1兆8千億円)を上回り、オスペル会長は引責辞任に追い込まれた。従業員も5500人削減する。

 ドイツ銀行でも損失が拡大。1〜3月期は1億4100万ユーロ(約230億円)の当期赤字に転落し、四半期業績としては5年ぶりの赤字を記録した。

 07年10〜12月期決算の発表の際、追加損失は5千万ユーロ(約80億円)以下だったとして、「我々のリスク管理の質の高さを証明している」と胸を張っていただけに、市場には驚きが広がった。1〜3月期の損失急拡大に、アッカーマン会長も「1〜3月の金融市場は、最近の記憶では最も困難な状態だった」と弁明に追われた。

 多額の損失計上が相次いだことで、市場の一部には「サブプライム問題は山を越えるのではないか」との期待もある。ただ、4月の主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で「100日以内の情報開示」が勧告されたことから、7月に損失計上の動きがさらに強まるとの見方も残ったままだ。

 リスク軽減のための資産売却も簡単ではなさそうだ。

 UBSは21日、サブプライム関連の証券など150億ドル(約1兆5600億円)を、投資会社ブラックロックが運営するファンドに売却したと発表した。220億ドルの簿価の資産を値引きした。

 ただ、ブラックロック側が支払った資金は、37.5億ドルは投資家から出資を募ったものだが、残りの112.5億ドルはUBSからの融資だ。市場関係者からは「これではUBSの抱えるリスクが一定程度残ったままになる。苦肉の策だ」との指摘も出ている。

 金融市場の混乱が実体経済に波及する可能性も現実味を帯び始めている。今月14日、英中央銀行のイングランド銀行のキング総裁は、英国経済の先行きについて、言葉を選びながらこう発言した。「今後、1四半期か2四半期はマイナス成長に陥ることもありうる」

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