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2008年05月26日(月) 00時00分

探偵!ナイトスクープ20周年、今も視聴率20%超朝日新聞

 いまは会えないあの人に会いたい、どうしても分からないけど知りたいことがある——そんなかなわぬ願いや素朴な疑問を、視聴者とタレント扮する探偵が一緒に追いかけてきた「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送)がこの春、20周年を迎えた。午後11時台という遅い時間の番組ながら、視聴率はいまに至っても20%を超える。衰えぬ人気の秘密は何なのか。

20周年記念番組の収録で万歳する西田敏行探偵局長(前列左から5番目)ら=23日、大阪市北区の大阪府立国際会議場、小玉重隆撮影   

  その晴れ舞台には3万人から応募が寄せられたのだという。

 23日、大阪市北区の大阪府立国際会議場で、放送開始20周年を記念した「グランドアカデミー大賞」(6月20日放送予定)が収録された。これまでの千回近い放送の中から、7部門の賞に選ばれた、極め付けの「オモロイ」作品56本が発表された。

 出演者だけでなく、選ばれた2700人の観客も多くが和服やイブニングドレス姿。番組側が「ナイトスクープは、視聴者あってのもの。そんなみなさんとともに、20周年を祝いたい」と正装での参加を呼びかけた。

 番組では、毎回ディレクターや構成作家ら30人近くが、視聴者からの依頼文に目を通し企画を選ぶ。ロケや取材を経て10分程度に編集される作品には、台本もリハーサルもない。設定を決め、同じ撮影を繰り返すと、素人の依頼者の話はおもしろくなくなり、探偵役の緊張感も下がるからだ。20年間変わらない手法だという。

 予定調和の映像になるのを避けるため、三脚で構えた撮影も少ない。カメラマンは後ろ側から追いかけ、「探偵が調査する」という行為の真実味を支える。

 番組を収録するABCホールには、抽選で選ばれた視聴者600人が会場に陣取る。おおむね、関西人。「みんな笑うために来てくれる。その爆笑の迫力が、偽りのない番組の力」と、番組の企画者で、今も陣頭指揮に立つ松本修・局長プロデューサー(58)は話す。

 関西地区での視聴率は20年間平均で20.1%、他局と比べた同時間帯でのシェアは40%前後という。番組は関西ローカルでスタートしたが、現在、全国34局で放送されている。東京では系列のテレビ朝日が、深夜2〜3時台や休日の午後帯などに放送していたが、05年3月で打ち切りに。昨年10月から在京独立U局のMXテレビが2週遅れで放送している。

 「東京では数字が取れないといわれ、不利な時間帯でしか放送できなかった。大阪と同じ土俵で勝負するなら、全国どこでも通用する自信はある。番組が伝えている内容は普遍的なものだと思う」と松本プロデューサーはいう。

 その証拠に、06年から発売され現在8巻まで出ている傑作DVD集は、4巻までで計20万本を売り上げている。1巻1万本で合格とされるこの種のDVDでは破格のヒット。さらに、地域別の売り上げでみると、関東地区が関西地区を上回るという。

 20年の歴史で変化した面もある。88年3月の放映開始から12年間、進行役の探偵局長を務めたのは上岡龍太郎。「いまも、あれほど鋭く批評できるタレントはいない」と松本プロデューサー。2代目は01年に就任し、現在も担当する俳優の西田敏行。もともと「番組のファン」といい、感激屋でVTRに涙を見せる姿が、新しい魅力となり「感動モノ」ともいえる依頼ジャンルが充実してきた。

 国際日本文化研究センターの井上章一教授は、「『ラブアタック!』など素人を使った番組は、大阪の放送局の伝統。街を“ギャラのかからないプロダクション”としているから、つくりものの部分が少ない。そこが魅力」と評する。「大阪の局も東京のスタジオで全国区のタレントを使わないと視聴率がとれないご時世だが、ナイトスクープを例外とせず、ほかの在阪局に関西から全国発信できる番組をつくってもらいたい」。

 番組への愛を公表する著名人が多いのも特徴だ。かつてビートたけしも番組に依頼を送ってきた。エッセイストの酒井順子や作家の吉本ばななは、DVDに添える冊子に一文を寄せる。吉本は「『その人の人生の面白さはその人に一個しかなくって、やっぱり人生っていいね』と思わされるこの番組をみんなが観るといいと思う」と記している。

 番組にはいまも毎週、300本ほどの個性あふれる依頼が、寄せられている。(木元健二)

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805260045.html