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2008年05月25日(日) 21時45分

スー・チー氏解放は求めず 国連事務総長「目的違う」朝日新聞

 【バンコク=柴田直治】国連事務総長として44年ぶりにミャンマー(ビルマ)を訪れた潘基文(パン・ギムン)氏は、サイクロン被害の救援関係者受け入れ拡大を軍事政権に承諾させたことを成果に25日、日程を終える。だが自宅軟禁が続くかどうかの瀬戸際にいる民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんに、手をさしのべることはできなかった。

 軍政のタン・シュエ国家平和発展評議会議長と23日、トップ会談した潘氏は、スー・チーさんら政治犯の解放を求めたのか。24日、バンコクの記者会見で質問が飛ぶと、潘氏は「今回は人道援助が目的だった」と答え、会談で触れなかったことを確認。「その問題について話す機会はきっと来る」と釈明した。

 しかし、スー・チーさんの軟禁問題は今がまさに正念場だ。軍政は昨年5月25日、軟禁の1年延長を宣言しており、本来なら25日には解放するか、軟禁を続ける何らかの根拠を示さなければならないはずだ。だが、軍政は態度をはっきりさせていない。

 スー・チーさんが03年5月30日、同国北部を遊説中に拘束されてから、間もなく5年。国家防御法は裁判抜きの拘束を5年までとしている。同法の適用が決まった段階から数えると、期限は半年ほど延びるが、国民から絶大な支持のあるスー・チーさんを解放することは考えにくく、法の運用を変えたり無視したりする可能性がある。

 潘氏はこれまで特使を3度派遣、タン・シュエ議長に書簡を送り、スー・チーさんらの解放や民主化プロセスへの参加を呼びかけてきた。今回の訪問にあたっては「議題を人道援助に限定し政治問題を絡めない」との条件をのまざるを得なかったとみられる。

 スー・チーさんにとって重要な時期に議長に会いながら、問題を持ち出すことさえ出来なかったことに、失望する民主化運動関係者は多い。

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