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2008年05月24日(土) 00時00分

「消えた宗教」マニ教の開祖の絵か、奈良で公開朝日新聞

 奈良市の私立美術館「大和文華館」所蔵の絵画に、マニ教の開祖マニ(216〜274)が描かれている可能性が高いことが、京都大の吉田豊教授(言語学)らの調査で明らかになった。かつてユーラシア大陸で広く普及したが、その後消滅し「消えた世界宗教」と言われる。吉田教授によると、マニを描いた絵画はこれまで部分的にしか確認されていないという。

マニ教絵画の可能性が高い「六道図」。釈迦とされてきた中央の人物がマニとみられる=大和文華館提供 中央がマニとみられる人物。白い外衣の両肩と両ひざにマニ教僧侶のマークが確認された=大和文華館提供

 絵画は、中国・元代後期(14世紀)の「六道図」(絹本著色、縦142センチ、横59.2センチ)。同館が63年、国内の美術品業者を通じて入手。中央の男性は釈迦を描いているとみられていた。

 しかし、東北大大学院の泉武夫教授(仏教絵画史)が06年に論文で、マニを描いた可能性を指摘。吉田教授が07年4月、マニを描いたとされる中国福建省・泉州の草庵(そうあん)石刻の彫刻や、一部が残っている中国・トゥルファン出土の絵画などと比較した。同館所蔵の絵画には、人の顔をかたどったマニ教僧侶を示すマークが白い外衣に描かれていた。両肩に垂れる「垂髪(すいはつ)」やあごひげ、手のしぐさなども特徴が一致したという。

 吉田教授は「マニ教徒は教義を教える際に絵を使うと言われてきたが、その絵が見つかったのは初めて。マニ教の終末観の天上、人間、地獄世界の『三道』を表したものだろう」と話している。

 六道図は同館で23日から始まった展覧会「高僧と美術—聖をめぐる人々」(6月29日まで)で公開している。

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 〈マニ教〉 ササン朝ペルシャ(225〜651)のバビロニアで生まれたマニが創始。3世紀以降、キリスト教やゾロアスター教、仏教などの諸要素を加え、スペインから中国までユーラシア大陸で広く普及したが、15〜16世紀に消滅。教義は光と闇、善と悪の二元的世界観に立ち、悪からの救済を重視するとされる。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805230075.html