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2008年05月24日(土) 00時00分

愛も特製、ランドセル 兵庫県たつの市の業者が考案朝日新聞

 病気でランドセルを使うことをあきらめかけた兵庫県の小学1年生2人が自分だけのランドセルを背負って、この春から元気に小学校に通っている。腰にベルトが付いていたり、縦横21センチの小ささだったりする特注品。この道30年のベテランが初めて作った。2人を育ててきた両親の愛情と、モノづくりの技術がしっかりと結びついたかばんだ。

腰にベルトの付いたランドセルで入学式に出た藤原崚真君=兵庫県加古川市立上荘小学校 自宅で小型のランドセルを背負う松盛りこちゃん=兵庫県姫路市大津区長松

 加古川市立上荘小学校の藤原崚真(りょうま)君(6)は心臓病で、2歳の時に左脇にペースメーカーを埋め込む手術を受けた。保育園に通っていた頃から主治医に「ランドセルは使わないほうがいい」と言われていた。肩ベルトが左脇腹に当たり、ペースメーカーを圧迫するからだ。

 姫路市立大津小学校の松盛りこちゃん(7)は赤ちゃんの頃から慢性肺炎で、常に酸素ボンベを持ち運んでチューブで鼻に酸素を送っている。身長は78センチ。入退院を繰り返し、幼稚園には年に約50日しか通えなかった。両親がランドセルを探したが、既製品は大きすぎて背負えなかった。

 2人のためにランドセルを作ったのは、国内最大手メーカー「セイバン」(兵庫県たつの市)の橋本雅敏・生産二課長(49)。07年9月に崚真君の両親、08年2月にりこちゃんの両親から、同社に「何とかランドセルを使わせてあげたい」と相談があったのがきっかけだ。百貨店などを探し回った末の依頼だった。

 キャリアが長い橋本さんも特注品は初めて。価格は既製品並みの約2万円に設定し、2人に会社に来てもらってデザインを考えた。

 崚真君のために、おなかで留める腰ベルトを考案。左右の肩ベルトをまっすぐ下に伸ばして腰ベルトと縫い合わせるデザインにした。わきの下にベルトが当たることはない。気に入った崚真君は、家の中でもランドセルを背負ったままでいるほど。「ベルトがかっこいい」と声を弾ませる。母の智子さんは「ペースメーカーを付けていてもランドセルが作れると、同じ病気の子どもに伝えたい」。

 りこちゃんには縦横21センチ、厚さ13センチの小さなランドセルを作った。重さは約500グラムで既製品の半分以下。留め金もすべて既製品より小さくした。りこちゃんは「かわいくて気に入っている。友達もたくさんできた」。毎日重さ3キロの酸素ボンベを持って送り迎えをする母めぐみさんは「本人が喜んでくれて、元気に通学できればそれだけで満足です」と話す。(玉沢綾子)

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805240052.html