記事登録
2008年05月24日(土) 10時32分

「心の病」労災 最多268人読売新聞

自殺は4年前の2倍…07年度

 職場でのストレスなどが原因で「心の病気」となったとして、2007年度に労災認定を受けた人は前年度比3割増の268人で、過去最多となったことが23日、厚生労働省の調べでわかった。

 このうち、未遂を含む自殺(過労自殺)も15人増の81人で最多となり、03年度の2倍超に急増している。長時間労働などで脳や心臓の病気になり、労災認定を受けた人も過去最多となり、労働環境の悪化で疲弊する人が増えている実態が浮き彫りになった。

 心の病気で労災認定を受けた人を年齢別にみると、最も多かったのは30歳代の100人で、37%を占めた。20歳代の66人(25%)、40歳代の61人(23%)が続き、若い世代で仕事や人間関係のストレスを多く抱えている様子がうかがえる。

 業種別では、製造業が59人で最も多く、以下、卸売・小売業41人、建設業33人、医療・福祉26人の順。

 心の病気を理由とした労災の申請者数も、前年度より133人多い952人と過去最高を更新した。

 一方、脳や心臓の病気で労災認定を受け、いわゆる「過労」と考えられるのは前年度比1割増の392人。このうち死者(過労死)は142人で、前年度より5人減った。

 過労の392人を原因別にみると、長時間労働が主因とされたのが362人。1か月平均の残業時間では80時間以上100時間未満が135人で最も多く、100時間以上120時間未満も91人、160時間以上も35人に上った。厚労省は、1か月の残業80時間以上を「過労死ライン」として認定の目安にしている。年齢別では、50歳代の163人と40歳代の115人で、全体の7割以上を占めた。心の病気とは異なり、中高年層で働き過ぎが目立つ結果となった。

 厚労省では「職場環境が厳しくなっていることを反映した結果。企業に対する指導や監督を強化していきたい」としている。

 労災 労働基準監督署が仕事中や通勤途中に負傷したり、業務によって起きた事故や過労で死亡したと認めた場合、労働者災害補償保険(労災保険)から労働者本人や遺族に一時金や休業補償などが支払われる。同保険の保険料は、雇用主が全額負担する。認定基準は社会情勢によって見直され、過労死や過労自殺は申請件数の増加で基準が緩和されている。

成果主義 職場環境が悪化

心の病気の労災認定者数が過去最悪となった理由として、厚労省、労組関係者、心療内科医などが共通して指摘するのは「職場環境の悪化」だ。職場に成果主義による人事制度が導入された結果、競争が激化し、人間関係がぎくしゃくするケースが増えた。「弱み」を見せまいと、心身の不調を一人で抱え込み、限界まで我慢する。外見だけでは異変が分からず、周囲が気付いた時には手遅れという場合もある。

 心の病気はもはや身近なものになりつつあるが、偏見もなお根強い。病気になる前に相談しやすい環境を整えたり、ストレスを感じない職場の雰囲気を作るなど、企業側の努力が必要だ。病気になった人をスムーズに職場復帰させる取り組みも重要になっている。

 復帰を焦り、病気を再発させるケースも多い。心の病はだれにでも起こりえる。それぞれが支え合う職場を目指し、企業と社員が力を合わせる必要がある。(社会部 本田克樹)

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080524-OYT8T00245.htm