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2008年05月24日(土) 21時44分

テントが足りない 販売巡り逮捕者も 四川大地震朝日新聞

 【安県(中国四川省)=小山謙太郎】四川大地震の被災地でテントが足りない。成都から北へ130キロ離れた農村では、配られたテントは全世帯の1割程度にとどまる。成都ではテントの販売を巡り逮捕者まで出た。四川省は5月末から雨期を迎え、住む場所の確保は急を要している。

自宅前に自ら作ったテントで暮らす楊金弟さん(左)、王通菊さん夫妻=24日午後、四川省安県五福地区、日吉健吾撮影

 軍のトラックが災害用テントを積んで村の避難所にやってくると、住民たちがわれ先にと群がった。「避難所の仕事が先よ。早く戻りなさい!」。村の共産党書記の呉邦燕さんが一喝すると、おとなしくトラックから離れた。

 元代に造られた木橋が今も残る四川省安県五福地区。人口1551人、471世帯に対し、政府から支給されたテントは50張りに満たない。10〜12人が6人用テントで夜を過ごす。

 入居の抽選にはずれた楊学才さん(46)は、丸太組みにシートを張った3畳ほどの小屋で妻と暮らす。家は全壊、畑が村の避難所になった。「これからは雨も多くなるから、小屋では長くはもたない。きちんとしたテントが欲しい」

 被災地全体ではテント330万張りが必要。中国外務省は、22日時点で40万張りしか用意できていないとして、各国に支援を求めている。

 成都市内のスポーツ用品街。一軒のアウトドア用品店が「しばらく休みます」と書いた段ボール紙を入り口に掲げていた。中国紙によれば、この店の店長ら12人が21日、赤十字名義のテント616張りや寝袋880個などを転売した疑いで逮捕された。

 「それが違うんだよ」。李望さん(33)ら商店街の店主らが教えてくれた。

 震災直後、キャンプ用テントが飛ぶように売れた。そこでこの店は入荷を急ぐため、キャンプ用テントの箱に「赤十字」「救済テント」と偽の張り紙をして、優先的に輸送させていたという。

 李さんらは店先で入荷の様子を見ていた。実際のところ、店頭で災害用テントは売っていなかった。「でも、やりすぎ。馬鹿な話だ」

 物不足に悩む被災者の間では、救援物資の横流しのうわさが絶えない。23日には、共産党中央規律検査委員会が担当者を四川省に派遣。災害用テントなどが市場に出回っていないか目を光らせている。

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