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2008年05月22日(木) 08時02分

裁判員制度まで1年、判事逮捕 法の番人信頼失墜 産経新聞

 ■宇都宮地裁「遺憾…厳正に対処」

 法の番人がまさか−。宇都宮地裁判事、下山芳晴容疑者(55)が21日、裁判所職員の女性に対するストーカー規制法違反容疑で逮捕された。裁判員制度まであと1年と迫るなかでの前代未聞の不祥事の発覚に、宇都宮地裁や最高裁はあわただしく対応に追われた。

 「極めて遺憾。処分については捜査の状況をみながら厳正に対処することになります」

 現職の地裁判事逮捕に宇都宮地裁の西岡清一郎所長は21日夜、記者会見で苦渋の表情を浮かべた。

 下山容疑者は4月1日に宇都宮地、家裁足利支部長に赴任したばかりだったが、同10日に上級庁の東京高裁から「以前の勤務地で問題行為があった」と連絡が入っていた。

 西岡所長は下山容疑者本人から約1時間半、事情聴取。「裁判官として勤めさせておけない」と判断し、自宅待機させていた。下山容疑者が実際に仕事をしたのは4月8〜10日の実質3日にすぎなかったこともあり、所長は「短期間だったので、人柄などよく分からない」と断った上で、「特段問題のある裁判官とは思わなかった。それまでは問題も聞いていなかった」「以前、東京家裁にいた時一緒だったが、話をしたことはなかった。若いころは熱心にやっていたようだった」などと話すのが精いっぱいだった。

 下山容疑者は、東京家裁、地裁での勤務経験もある。東京地裁判事だった平成10年には、故中島洋次郎元衆院議員による受託収賄事件で陪席裁判官として実刑を言い渡した。「完全自殺マニュアル」の著者の男性による覚せい剤取締法違反事件の公判も担当するなどした。

 最高裁が把握しているうち、現職裁判官の逮捕は、3人目。昭和56年には、東京地裁判事補が破産処理に絡んで、管財人からゴルフセットなどをもらったとして収賄容疑で逮捕された。起訴猶予処分になったが、罷免されている。

 平成13年には、未成年と知りながら少女らに現金を渡してわいせつ行為をしたとして、東京高裁判事が児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕、起訴された。有罪判決(懲役2年、執行猶予5年)を言い渡され、控訴せずに判決が確定。国会の裁判官訴追委員会から罷免を求めて訴追され、裁判官弾劾裁判所は「失われた司法の信頼を回復するには弾劾により罷免するしかない」と、罷免判決を言い渡した。

 現役の法の番人の犯罪に、最高裁も対応に追われ、大谷直人・人事局長が「極めて遺憾」などとのコメントを出した。

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