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2008年05月22日(木) 00時00分

壁画に負けぬ逸品、キトラ展に 川原寺裏山遺跡の塑像片朝日新聞

 奈良県明日香村の飛鳥資料館で開かれている特別史跡、キトラ古墳(同村、7世紀末〜8世紀初め)の十二支壁画「子(ね)・丑(うし)・寅(とら)」特別公開で、壁画と同じ獣頭人身の像の頭部などとみられる塑像片5点が展示され、注目を集めている。

十二支の酉という説も浮上した迦楼羅像断片    

 キトラ古墳の北東約2.5キロにある川原寺裏山遺跡で、故網干善教・関西大名誉教授が74年に発掘した、寺院を飾っていたセン仏(せんぶつ、センは土へんに專)(土製の仏像レリーフ)など数千点のうちの一部。同寺は、母の斉明天皇の冥福を祈って天智天皇が創建し、その後、火災で焼失したと伝わる。

 今回展示されているのは、鳥の頭の塑像片(高さ8センチ)や、午(うま)の鼻と口の部分とみられる破片、十二神将の腕の部分とみられる破片など。焼けているため表面に色彩はないが、当時の彩色文様の跡を残すものもある。

 鳥の頭の塑像片はこれまで、阿修羅などと同じ仏教の守護神の迦楼羅(かるら)と推定されてきた。だが、午らしい動物の鼻口片も出土していることから、迦楼羅は実は十二支像の「酉(とり)」ではないかという見方も出ており、今後の議論の的になりそうだ。同資料館の杉山洋・学芸室長は「研究者にも謎の多い隠れた名品なので、じっくり見てほしい」と話している。(編集委員・小滝ちひろ)

http://www.asahi.com/kansai/entertainment/news/OSK200805220029.html