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2008年05月21日(水) 19時47分

憲法改正案を国会に提出 タイ・タクシン派与党朝日新聞

 【バンコク=山本大輔】タイ第1党のタクシン元首相派「国民の力党」(PPP)など連立与党議員ら164人が21日、憲法改正案を国会に提出した。反タクシン派は改正案が元首相の復権につながる内容だとして反発を強めている。PPP党首でもあるサマック首相は同日、国会審議に入る前に、改正案の是非を問う国民投票を7月に実施する考えを明らかにした。政治混乱を避けるためとみられる。

 現憲法は、タクシン元首相を失脚させた06年のクーデターで誕生したスラユット前政権下に制定された。最も民主的と言われた「97年憲法」を停止し、軍の政治力を強めて元首相の影響力を排除するのを狙った。前政権の決定はすべて合憲とされ、現憲法下で発足した調査機関が元首相を汚職容疑などで告発した。

 今回提出された改正案は、王室に関する条文を除く大半を見直し、97年憲法に戻す内容。前政権を保護していた「合憲性」は消滅し、元首相を起訴した調査機関の正当性にも疑問符がつく。

 PPPが主導した改憲議論は、下院議長だったヨンユットPPP元副党首の選挙違反の疑いを最高裁が審理すると決めた3月下旬に急浮上した。党幹部の選挙違反が認められた場合、憲法裁が同党の解党命令や党幹部の公民権停止を判断できると定めた条文の見直しが焦点となった。

 選管などによると、ヨンユット氏の違反行為が認定されたとしても、憲法裁が解党にかかわる最終判断を下す前に条文が改正されれば、解党を回避できるという。

 PPPは、同党主導の連立与党が圧倒的多数を占める国会審議で憲法改正を試みたが、野党は「党利と特定人物のための利己的な動き」と批判。反タクシンを掲げる市民団体が抗議集会を開くなど緊張が高まっていた。憲法改正案の提出を受け、元首相の復権阻止を掲げる市民グループは近日中に大規模な反対集会を開くことを決めた。

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