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2008年05月21日(水) 15時04分

サプリメント巡るM&A報酬9億円隠す 脱税容疑で告発朝日新聞

 企業合併・買収(M&A)の仲介交渉で得た所得約9億円を隠し、所得税約3億3千万円を脱税したとして、東京の不動産会社の番場秀幸社長(59)が東京国税局に所得税法違反容疑で東京地検に告発されたことが分かった。

 関係者によると、番場社長は04年ごろ、人気ダイエット食品「BOWS(ボウス)」を販売していた健康食品販売会社「バリアスラボラトリーズ」など2社と、2社を買収しようとしていた特別目的会社「三泰」(現BL、東京)などとの仲介交渉をしていた。買収は同年中に成立、番場社長は報酬として三泰から同年6月、約9億円を受け取ったという。

 しかし番場社長は04年分の確定申告をしなかった。その後この約9億円が、番場社長が実質的に支配する、実体の乏しい情報調査会社「インフォート」(既に解散)の05年度の収入であったかのように仮装。さらに架空の情報委託手数料などを計上し所得を圧縮したうえで申告したという。

 国税局は、インフォートが欠損と相殺させて利益が出ないようにするためのダミー会社で、実際は番場社長個人の04年分の事業所得だったと認定、隠した所得は預金や小切手などにしていたとみている。

 ボウスは、糖分や油分を体内で封じ込め、排出する顆粒(かりゅう)状のサプリメントで、01年の販売開始以来、04年末までに約105億円を売り上げた。

 しかし05年に公正取引委員会が「広告内容に問題がある」として排除命令を出した。三泰側は、公取委の調査を受けていたことをバリアス社が正確に告知しなかったと主張。排除命令を受けたことで、売り上げは下がり、株式評価額も暴落したとして、バリアス社の旧株主に損害賠償を求めて提訴した。

 関係者は、こうした騒動のなかで報酬の無申告が発覚するのを恐れた結果、番場社長が脱税工作に走ったとみている。

 番場社長は、所得はインフォートに帰属するもので、M&Aが成立し収益が確定したのも05年だった、などと主張している模様だ。代理人の弁護士を通じて取材を申し入れたが、「回答できない」としか答えていない。

 ボウスについては、別の会社が06年に販売権を買い取り、バリアス社も別の経営者が携わっている。(中村信義、舟橋宏太)

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