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2008年05月20日(火) 12時05分

“鉄ヲタ”牧師、信者に暴力とセクハラオーマイニュース

 静岡県浜松市内に本部を置くキリスト教会「ハレルヤコミュニティーチャーチ(HCC)」の元信者らが、同教会代表の榊山清志牧師から暴行やセクハラを受けたとして損害賠償を求めていた裁判の判決が5月19日、静岡地裁浜松支部で言い渡された。

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 判決は「時効」を理由として元信者らの請求を棄却したが、同時に榊山牧師による暴行とセクハラは真実であると認定した。

■鍋で殴るわ、パンツを下ろさせるわ……

 HCC は、2000年まではプロテスタント福音派の団体であるイエス福音教団に所属し、「イエス福音教団浜松教会」と名乗っていた。しかし01年に同教団を脱会し、現在の名称に。キリスト教関係者によれば、代表の榊山牧師は浜松市内にある牧師の集まりからも外されているという。

 HCC 在籍中に榊山牧師から暴力やセクハラを受けたとして、元信者4人が教会と榊山牧師を相手に計1360万円を求めて提訴したのは、05年10月。原告らの主張によると、榊山牧師は1997年から2000年にかけて、治療や体罰と称して信者に大量のもぐさで灸をすえ、後遺症が残るほどの熱傷を負わせた。また、平手打ちやフライパンでの撲打に加え、鍋やこたつの脚で30回以上も信者の臀部(でんぶ)を殴るなどしたという。

 原告の1人である女性信者は、榊山牧師に「パンツを下げろ」と強要され、臀部を平手で叩かれたという。さらに、榊山牧師に個室で「心の傷を癒やす必要がある」などと言われ、膝(ひざ)の上に乗せられて内またをくすぐられたと主張していた。

■「マインド・コントロール」と「時効」の壁

 5 月19日の判決は、こうした原告らの主張を認めたものの、「原告らが訴訟を提起したのは、各不法行為の日から3年が経過した後」であるとして、被告らの損害賠償請求権は時効によって消滅しているとした。原告側は、「榊山牧師らによるマインド・コントロールによって、脱会後も激しい罪悪感やフラッシュバックにみまわれ、恐怖心から提訴に時間がかかった」とし、原告らが弁護士に相談した05年を時効の起算点にすべきと主張したが、認められなかった。

 判決言い渡しの後、弁護士会館に場所を移して行われた支援者やメディアへの「報告会」で、原告代理人の森下文雄弁護士は、こう語った。

 「統一教会(統一協会)関連の訴訟では、15年前に財産をとられて訴えた人が(脱会後を時効の起算点とする判断によって)主張が認められた事例はある。それと比べると、(今回の判決は)後退した部分がある。裁判所の理解不足もあったのではないかと思う」

 原告の1人は、「(主張が認められず)残念の一言」と語りつつも、

 「事実認定はされている。まだ教会の中に残ってコマのように働かされている人たちに対して、(目を覚ますように)はたらきかけていきたい」

とした。控訴するかどうかについては、今後検討するという。

■“強制労働”で敷地内に鉄道を敷設

 HCC本部は、茶畑などが広々と見渡せる地区にある。まるでジャングルのように木が生い茂った敷地内には、保育園やミニ鉄道まである。敷地内と近隣に少なくとも3カ所の広大な駐車場も備える。

 「敷地内の鉄道は大井川鉄道からもらったもので、信者たちが『奉仕』として自分たちで敷設しました。ほかにも樹木の移植などもやらされました。こうした労働は午後1時ごろから、遅いときには夜11時まで続いたこともあります。給料は1円も出ません。『奉仕』ですから。しかし拒否しようとすると朝の集会で皆の前で『不信仰だ』などと非難される。事実上の強制労働ですよ。榊山牧師は、実は“鉄ヲタ”ではなく、単に目立つことをやりたいだけなんですよ」(元信者)

 重労働は午後からとはいえ、HCCでは朝4時半から礼拝が行われ、塾生たちは昼前までアルバイトなどで生活費を稼ぐ。HCC信者のうち、牧師などを目指す「塾生」が、こうした生活を送る。なかには妊娠中にスコップでの穴掘りなどを割り当てられて、3度も流産した女性信者もいたという。

■かみ合わない言い分

 HCCは現在、国内23カ所のほか海外にも伝道師・宣教師を派遣していると公式サイトに記載している。中村良二副牧師によると、現在の本部の信者数は400人から500人。うち30人から40人が前述の「塾生」にあたる信者だ。

 「榊山牧師は『教育上のしつけ』としては暴行の一部を認めましたが、日常的にとか20発、30発も殴ったとか、セクハラなどは認めていません。判決はその点で不本意。しかし原告の賠償請求を棄却した点には満足しています」(中村副牧師)

 中村副牧師に前述の“強制労働”の件を尋ねたが、強く否定。

 「強制はしていない。(塾生たちは内容を)知って入ってくるし、やめるのも自由。今回の判決でもマインド・コントロールはなかったと裁判所が認定しています。集会を欠席しようとした塾生を、ほかの信者の前で『不信心』などと叱りつけることもしていません。訴訟やマスコミを使って教会を批判する一連の動きは、元信者以外のHCC教会潰しを目的とした人々による誹謗(ひぼう)中傷行為だと考えています」(中村副牧師)

 記者の取材に対して複数の近隣住人が、「最近、HCC本部の信者の出入りが激減している」と語ったが、中村副牧師はこれも全否定。

 「(支部の)教会によっては減っていますが、本部については、数の上でも実感の上でも、減っているという認識はない」(中村副牧師)

 近隣住人たちは、いずれも「HCCとはほとんど交流がない」と語っていたが、HCCを悪く言う人は皆無。そもそも今回の裁判のことを知っている人もいなかった。それなのにHCCの言い分と住民の証言が全くかみ合わない。HCCは近隣住民をも「教会潰しを目的とした人々」だというのだろうか?

(記者:藤倉 善郎)

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