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2008年05月20日(火) 00時00分

職員の不祥事調査に納税情報を収集、利用 京都市朝日新聞

 京都市が、職員不祥事の内部調査のため監察担当者に税業務の兼務辞令を出し、職員の納税情報などを「税務調査」名目で集めたことが市の内部資料でわかった。職員不祥事に頭を痛める市は内部調査を強めているが、本来は徴税のために使われるべき権限を職員の素行調査や不祥事の把握に転用した形だ。

 市によると、調査対象となったのは市環境局まち美化事務所の男性職員。「コンパニオン派遣を兼業している」との通報が00年から断続的に市にあった。兼業は地方公務員法が禁じており、環境局と総務局の監察担当者が07年10月から今年2月に調べた。

 3月に作成された環境局の調査報告書によると、市は納税状況や預金残高から副業収入をつかもうと、07年12月、監察担当者6人に理財局主税課員を兼務させ、市が持つ職員の固定資産税台帳の情報を入手した。また、兼業先とみられた企業の納税情報を税務署で閲覧し、複数の銀行から職員の口座の出入金記録など数年分の情報提供を受けた。税務署や銀行には「脱税の疑いがある」と説明。徴税のための調査として依頼した。

 市によると、男性職員が夜間に京都市内のコンパニオン派遣業者のビルに出入りしたり、頻繁に不動産を取得したりしたことはわかったが、兼業の裏付けはとれなかった。「注意に従わず、ビルへの出入りを繰り返した」として3月に譴責(けんせき)処分にし、この職員は直後に依願退職した。

 星川茂一副市長は4月、市議会の調査特別委員会で「法律上許されるぎりぎりの調査をした」と説明した。明石隆夫・市服務監は取材に対し「税に関することは守秘義務があり、調査したかどうかも答えられない」としている。

 個人情報保護に詳しい安冨潔・慶応大教授は「形式上問題がなくても、真の目的が非行調査であれば、個人情報取り扱いの適正さに疑問を持たれかねない非常に際どい事例だ」と指摘。「納税情報は究極の個人情報。非行調査のために市がこうした情報に簡単に接触したとなると、本当に市職員だけが対象なのかと市民に懸念を持たれかねない。脱税の疑いは本当に強かったのか、別の手段を尽くしたのか、検証が必要だ」という。(山岸一生)

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805200043.html