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2008年05月20日(火) 21時21分

子宮破裂お産時に障害 病院側に7300万円支払い命令朝日新聞

 過去に帝王切開した妊婦が自然分娩(ぶんべん)するのは危険性があるのに十分な監視を怠り、子どもに重度の障害を負わせたとして、福島市内の夫婦が福島県立医科大学付属病院(福島市)に1億円の損害賠償を求めた裁判の判決が20日、福島地裁であった。病院側の過失を認め、同大に約7300万円の支払いを命じた。

生まれた直後、幕田智広さん(左)に抱かれる未風(みゅう)ちゃん。右は妻の美江さん=幕田さん提供

 森高重久裁判長は「注意深く監視すべき義務があり、緊急事態への準備をしておけば事態は避けられた可能性が高かった」と指摘した。

 原告は幕田美江(よしえ)さん(41)と夫の智広さん(42)。美江さんは93年8月、帝王切開で双子を出産。95年5月に同病院で自然分娩する際、帝王切開の傷が裂けて子宮が破裂した。帝王切開への移行が遅れ、次女の未風(みゅう)ちゃんは仮死状態で生まれた。未風ちゃんは重度の脳障害があり、4年9カ月後に死亡した。

 森高裁判長は、帝王切開した女性が自然分娩する危険性について「当時、具体的な指針はなかったが、病院側は説明義務を果たしていないと言わざるを得ない」と判断。「美江さんが痛みを訴えた時点で診察していれば、子宮破裂が迫っていると診断できた可能性があった」と、監視の不十分さを指摘した。

 そのうえで、胎児も大きめで美江さんには自然分娩の経験がなかったことなどから「緊急の帝王切開に至る可能性は高かった」とした。しかし、手術室に鍵がかかっていてすぐに使える状態になっていなかったことなどから、病院側は緊急事態への準備をしていなかったと判断した。

 同病院は、厚生労働省から特定機能病院の認可を受け、福島県では中核的な施設。美江さんも5年間看護師として勤務していた。美江さんは「未風は短い時間だったが、生きた証しを残してくれた。医療の従事者には責任の重さを再認識してもらいたい」と話した。同大は「判決文を詳しく検討して今後の対応を検討する」とコメントしている。

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