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2008年05月19日(月) 00時00分

過労の背景に家事労働の負担も認定 大阪地裁判決朝日新聞

 過労による脳出血で半身まひになったのに労災の補償が認められないのは不当として、大阪市に住む元会社員の女性(38)が労働基準監督署による補償給付金不支給処分の取り消しを求めた行政訴訟の判決が19日、大阪地裁であった。山田陽三裁判長(中村哲裁判長代読)は家事の負担も考慮したうえで、「脳出血は会社の業務の過重な負荷が有力な原因」として不支給処分を取り消した。

 女性の代理人弁護士は「家事を含めた生活実態をとらえ、働く者が置かれた状況を重視した司法判断は画期的だ」と評価した。過労をめぐる裁判で、家事労働の影響を踏まえた判決は異例という。

 判決によると、女性は大阪府東大阪市の縫製会社で専門工として働き、99年3月に脳出血で倒れるまでの半年間、時間外労働は最長で月約81時間に及んだ。一方、94年に母を亡くし、帰宅後は父と弟の夕食の準備や掃除などで1日約4時間の家事をこなし、睡眠時間は5時間程度だった。

 東大阪労基署は業務と発症の関係を認めず、休業や障害の補償請求を退けたが、判決は「業務の負荷は質量ともに過重だった」と指摘。家事負担について、労基署側は「私的な問題」と主張したが、判決は「家事の負荷は小さくなく、回避や軽減もできなかった」と述べ、発症の背景にあった事情と認定した。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805190056.html