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2008年05月18日(日) 21時22分

いまだ生き埋め9500人、146時間ぶり男性救出も朝日新聞

 【北川(中国四川省)=池田孝昭、阿久津篤史】中国四川省で起きた大地震は18日、発生から7日目を迎えた。中国政府は死者数が3万2476人に達したと発表した。同省内の被災地では強い余震が続き、生き埋めのままの被災者は9500人余りに上っている。

がれきの下に埋まっている弟に線香や「紙銭」を手向ける女性=中国四川省北川、池田写す

中学校の捜索をする日本の国際緊急援助隊=18日午前、四川省北川チャン族自治県曲山、樫山晃生撮影

  

 日本の国際緊急援助隊が17日深夜に入った北川チャン族自治県の曲山地区では、がれきの下に埋まっている親族を住民らが捜していた。辺りは腐臭が漂う。山が崩れ、土砂が商店街やアパート、病院などをまるごと押しつぶしている。

 「この下に私の弟がいる。まだ見つからないの」。一人の女性が線香を片手にその山を登り始めた。鉄骨がむき出しになったコンクリート、マットレス、ぺしゃんこになったパトカーがあった。

 曲山地区の人口は約3万人。死者は約1千人、行方不明者が1万人に上っている。道路わきには、トラックで運ばれた遺体袋が次々に置かれていく。約100体。崩れた路肩から転げ落ちる遺体袋もあった。防疫係が消毒剤をまくと、あとは野ざらしだ。

 劉定美さん(42)は、やかんと、小さなバッグだけを手に、がれきの山から下りてきた。たまたま、外出中に地震に遭って助かった。「自宅は完全につぶれていた。この山のどこかに、兄がいるはず。まだ見つからない」とぼうぜんとした様子で話した。

 日本の援助隊が捜索に当たった北川第一中学校の現場には、同校でコンピューターを教えていた娘(26)の救出を待ち続ける黄義春さん(50)の姿があった。「前の晩に電話をした時も、親の健康のことばかりを心配していた。婚約者が決まり、これから婚礼家具を買う話をしたばかりなのに」

 夫と、娘の婚約者と一緒に現場で捜索を見守っている。

 地震発生から時間がたち、生存者救出の望みは薄くなっていく。ブンセン県映秀地区で18日午後、生き埋めになっていた男性が146時間ぶりに救出され、北川の病院倒壊現場でも同日午前、男性が救出されたが、同日未明の余震でブンセン近くの被災地につながる道路が再びふさがれたほか、一部の地域への道は不通のままだ。救助活動が手つかずになっている場所もある。

 日本の援助隊は18日、同中学校で計13人の遺体を発見し、収容した。小泉崇団長は同校の現場で生存者が見つかる可能性は事実上ないと判断。19日からは曲山地区市街地の捜索に集中する方針だ。

 中国政府は18日、19日から21日までの3日間を全国哀悼日とすると発表した。これにともない、上海などで予定していた北京五輪の聖火リレーも3日間、中断する。国旗を半旗で掲揚し、地震発生時刻からちょうど1週間の19日午後2時28分に3分間の黙祷(もくとう)をささげ、車両や列車、船は警笛を鳴らすよう要請する。

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