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2008年05月18日(日) 14時04分

あなたの知らない野口英世 猪苗代で市民劇朝日新聞

 福島県猪苗代町出身の世界的な細菌学者、野口英世が没してから80年。命日の21日、野口の知られざる功績を知ってもらおうと市民有志が作った劇「大陸の伝説」が、会津若松市文化センターで上演される。野口が黄熱病研究のかたわらで続け、当時の学説をくつがえした南米ペルーの風土病研究に焦点をあて、会津人としての野口像を描く。野口の「そっくりさん」の小学校教諭が主演を務め、小学生から中高年層まで様々な市民が参加する。

上演日が迫り、けいこに熱が入る出演者たち。左が、野口英世そっくりさんの渡部英世さん=17日、会津若松市栄町の会津中央公民館

 野口は1928年5月21日、西アフリカで亡くなった。51歳だった。自らも発症した黄熱病の研究で有名だが、ペルーの風土病「オロヤ熱」の研究で功績を挙げたことはあまり知られていない。

 脚本を書いた会津若松市の会社員一牛(いちぎゅう)雄司さん(52)は、野口の研究を進めるなかで、オロヤ熱研究に着目した。野口は当時の医学界で否定されていたペルーの医学生ダニエル・カリオン(1857〜1885)の研究を引き継ぎ、それが正しかったことを証明した。一牛さんは、「オロヤ熱の研究は、黄熱病を研究する真っ最中に行われている。どんなに忙しくても真実が通らなければ許せないという、英世の会津人気質を見ることができる」と話す。

 昨年末に市民に参加を呼びかけると、多くの希望者が集まり、出演者は29人に。会津坂下町の無職武川晴子(せいこ)さん(61)は演劇の経験はないが、一牛さんの脚本に感銘を受け、参加を志願した。「自分の芯になっている会津の心を、劇を通して伝えていきたい」と話す。

 野口役は、野口のそっくりさんとしてテレビに出演したこともある猪苗代町の小学校教諭渡部英世さん(50)。野口を尊敬する両親から同じ名前をつけられた。「せりふが詰まってしまって大変だが、なんとか英世の医学への熱意を演じてみせたい」と意気込んでいる。

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 上演は、会津若松市城東町の市文化センターで20、21日。いずれも午後6時半開演。入場料は前売りで一般1千円(当日1200円)、学生600円(同800円)。(牧内昇平)

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