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2008年05月17日(土) 17時51分

支援の輪、阪神遺児・中華街・医療NGO… 四川大地震朝日新聞

 中国・四川大地震の被災者のために役に立ちたい——。現地から日々伝わってくる被害状況を受け、各地で募金などの支援の輪が広がっている。阪神大震災など、地震被害の経験が多い日本。ひとごととは思えない隣国の惨状が、人々を突き動かしている。

出発前に打ち合わせをするAMDAのニッティヤン・ビーラワーグさん(左)=17日午前7時32分、成田空港、的場正撮影

四川大地震で被災した遺児の支援を呼びかけ、街頭募金活動をする学生たち=17日午前、東京・新宿、中里友紀撮影

 17日、東京のJR新宿駅前では、災害などで親を失った子どもを支援する「あしなが育英会」(本部・東京)の奨学生や中国人留学生ら約50人が緊急募金で街角に立った。買い物客や家族連れが足をとめ、次々と募金した。

 「絶望した13年前の僕と同じ状況。そういった子供たちを『独りじゃない』と、気づかってあげたい」。小学1年の時に阪神大震災で両親を亡くした西山雅樹さん(20)=日本社会事業大3年=は自らの経験を語り、支援を呼びかけた。

 今回の地震で親を亡くした遺児たちに心のケアをしようと、同会は6月半ば、中国四川省に向けて使節団を派遣するという。

 横浜市栄区でこの日始まった国際交流の催し「あーすフェスタかながわ」でも、各国の伝統料理などの屋台の一角に募金箱が並んだ。地元の横浜華僑総会とNPO法人「地球市民ACTかながわ」のボランティアらだ。会員には横浜中華街の中国人も多い。近田真知子代表は「被災地の子どもたちの力になれるよう、知恵と力を出し合いたい」と話している。

 横浜中華街でも16日までに、全店舗約300店に義援金箱が置かれた。横浜山手中華学校中学部の生徒136人が手づくりした。

 横浜中華街発展会協同組合の林兼正理事長(66)は阪神大震災の後、中華街で集めた義援金約600万円を手に被災地に入った経験がある。中国での大地震に、中華街の支援の動きは素早かった。「現金で100万円を持ってきてくれる人もいた。5月いっぱい義援金を集めて中国大使館に手渡したい」。現在、大使館や横浜市と義援金以外の支援策も検討中だ。

 4月にジャイアントパンダのリンリンが死んだばかりの東京・上野動物園。来日した中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席が、ジャイアントパンダ2頭を日本に貸し出す意向を表明した矢先の地震に、同園の担当者は「(管轄する)東京動物園協会として支援策を検討している」という。

 一方、国際医療NGO「AMDA」(本部・岡山市)のスタッフで、オーストラリア国籍のニッティヤン・ビーラワーグさん(39)が17日、成都に向けて成田空港を出発した。すでに被災地で緊急救援活動をしている台湾支部の17人の医療チームと合流し、後方支援にあたるという。

 被災地では、どんな支援が求められているのか。何が足りて何が足りないのか。朝日新聞の電話取材にも混乱ぶりが伝わってくる。

 四川省都江堰(とこうえん)市の職員が「重傷患者は、どんどん成都(の病院)に運んだので、食料不足問題は少し落ち着いた」と話す一方で、同省の政府関係者は「けが人がどんどん弱っていき、薬も食べ物も水もまだ足りない」。

 日本の緊急援助隊が活動している青川地区で現地の救助指揮にあたった地元関係者は打ち明けた。

 「薬、食べ物はもちろんだが、やっぱりお金が欲しい。これだけ崩れ落ちた建物を復旧するのに、いったいどれくらいの時間と費用がかかるのか」(今村優莉)

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