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2008年05月17日(土) 15時06分

防火材の継ぎ目から煙もれの危険、都内10高層ビル確認朝日新聞

 東京消防庁が、都内の高層ビル17棟52カ所の防火・防煙区画を調査したところ、10棟18カ所で、防火材の継ぎ目から煙が漏れ出す危険があることがわかった。こうした危険はこれまで想定されておらず、漏れを防ぐ加工について指導を強化する方針だ。

 昨年4月、港区の「六本木ヒルズ」の森タワー(54階建て)で、多数が避難するボヤ火災が起きたのを受けて、昨年、都内に308棟ある高さ100メートルを超えるビルから、公共施設や商業ビルなど17棟を抽出して目視で調査した。

 高層ビルでは、エレベーターが上下する煙突状の空間や、空間の上部にあるエレベーター機械室、避難階段などを煙や火が出入りしない防火・防煙区画と定め、防火試験に合格した壁板や防火扉で囲うよう建築基準法で義務づけている。煙突状の空間を通って、煙や火がビル全体に充満するのを防ぐためだ。

 しかし、森タワーのボヤでは、壁板の継ぎ目から煙が区画外の通路などに漏れ広がり、火元とは関係のない場所で煙感知器が作動したため、火元の特定や消火活動に手間取った。

 危険が指摘された18カ所の区画は機械室などで、いずれも軽量気泡コンクリート(ALC)板が使われていた。板は防火試験に合格していたが、同庁は継ぎ目がむき出しで漏出の危険性が高いことを確認した。一方、避難階段は17棟とも継ぎ目を埋めた上で壁紙が張られたり塗装されたりしており、漏れの可能性はないと判断した。

 同庁によると、継ぎ目は既存のビルでも耐火材を埋め込む簡単な工事で処理できるという。今後、ビル建築時の防火基準を定めた「予防事務審査・検査基準」の項目に継ぎ目の処理を加えるなど、指導を強める方針だ。(二階堂祐介)

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http://www.asahi.com/national/update/0517/TKY200805170137.html