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2008年05月16日(金) 11時12分

秋葉原グラドル逮捕事件で報じられない真相オーマイニュース

 グラビア・アイドルとして「過激」といわれるほどセクシーでユニークな表現活動を続けてきた沢本あすかさんが逮捕されたのは、4月25日のことだった。

 容疑は都迷惑防止条例違反の疑いで、4月20日の秋葉原の歩行者天国において沢本さんが下着を露出したことが罪にあたる——と警視庁は判断し、逮捕に踏み切った。

 この事件にマスコミが一斉に飛びついた。全国紙は実名・写真入りで報道し、スポーツ紙・夕刊紙は逮捕劇をスキャンダラスに報じ、民放の報道番組でもニュースは流れた。ワイドショーでは事件を取り上げて、珍奇な時事ネタとして面白おかしく報道した。

 秋葉原の歩行者天国というと、いまではさまざまなコスプレに着飾った女の子たちが多く路上に現れ、写真を撮ろうとする男性たちに囲まれる、というのが日常の光景となっている。路上で音楽演奏する人たちも多い。休日に秋葉原を訪れると、まるで異世界に来たような感覚を味わえる。日本好きの外国人観光客の中でも若い層は秋葉原には必ず訪れる。誰もが自由に自己表現できる街、それが秋葉原だ。と皆、思ってきた。いわば、「表現の解放区」というわけだ。

 しかし、自由だと信じられてきた解放区に突如、警察による介入が入った。それが沢本さんの逮捕事件だ。大騒動となった事件の舞台裏には一体、何があったのか? 真相に迫るべく、私は徹底取材した。

■沢本あすかさんのアキバでの“過激”露出

仮装したり撮られたりが常識となっている秋葉原で起きた「みせしめ」逮捕劇。沢本さんの人気が秋葉原に留まっていれば逮捕されることはなかったのに……=写真はイメージ、ロイター
 逮捕の概要を伝える前に、沢本さんの経歴と秋葉原での活動について簡単に御説明しよう。

 沢本さんは2004年からグラビア・アイドル活動を始め、各種メディアに登場し、単独出演のDVDも多数リリースしている。

 そんな沢本さんが2007年夏頃から秋葉原の歩行者天国に登場するようになった。派手な姿は人目を引いた。ミニスカート姿の彼女は股を大きく広げて、下着のTバックを観衆に見せるべく露出してアピールするという、一見過激で刺激的な「路上撮影会」なるセクシー・パフォーマンスを始めるようになった。

 彼女が現れて芸を始めると、一目見たさにすぐに人だかりができ、カメラやケータイで記念の「パンチラ」写真を撮る人が集まり、賑わった。大衆の気持ちを沢本さんは引きつけ、そして、パフォーマンス後に、自分のDVDや有料イベントを知らせるチラシを手渡した。

 沢本さんが自らのTバックを披露するパフォーマンスは定期的に秋葉原で行われるようになった。うわさを聞いて見物しに来る人もいて、ファンの数も増えていき、彼女が現れると常に人だかりができるようになった。沢本さんのパフォーマンスをカメラで撮ったことがあるという事情通の男性はこう語る。

 「アキバには過激なコスプレをする人が少なくないですけど、とりわけ、沢本さんのは一番スゴイ。Tバックを間近でモロで見せてくれますから。おいしいショットがタダで撮り放題できるんですから、サイコーですね」

 ただ、沢本さんの人気が高まるにつれ、警察との緊張感も高まっていた、と当時の事情を知る人は語る。

 「沢本さんが『パンツ見せ』して、ホコ天で人がかなり集まるようになると、警察も無視するわけにはいかず、クレームをつけるようになってきました。『卑猥なことはやめなさい』と警察は指導しましたが、沢本さんは『文句を言われる筋合いはない』と怯(ひる)まず、両者の間で軋轢が生じるようになりました」

■大手メディアも取材した逮捕理由となった路上撮影会

 そして、逮捕の口実となったのが、今年4月20日のパフォーマンスだった。

 この日も各所でミニスカートの沢本さんは、思いっきり股を開き、Tバックを大勢に見せた。ガードレールの上に立ち、電柱につかまり片足を高く上げ、パンツを丸見えにするパフォーマンスに、100人単位の素人カメラマンらが群がった。関係者によれば「普段の何倍もの人が集まっていた」と、その日は特に大盛況だったと証言する。

 実はその日、複数の民放局のテレビ取材班が群衆に紛れ込んでカメラを回していた。業務用カメラを担ぐカメラマンやリポーターが沢本さんの傍に寄って、彼女の露出ショーと周りの熱気を報道した。

 テレビ局は翌日のワイドショーなどで、「秋葉原ではいま、信じがたい過激なパフォーマンスが行われている」とし、沢本さんの活動を全国に紹介した。全国中継する複数のテレビ局が過激化する秋葉原の歩行者天国のやり玉として沢本さんを挙げたのだ。

 20日に現場に居合わせた男性は証言する。

 「テレビ局のカメラがまわっていることから、見物客もすごい数でしたね。パンチラ狙いのカメラ小僧もアキバの隅々から総結集した感じぐらいに大勢集まりました。お祭りのような、ものすごい盛り上がりで、著名グラドルが現れたかのような『路上撮影会』になっていましたね」

 路上撮影会としては記録的な賑わいだった。だが、あまりに過熱だったために、警察は黙って放置するわけにはいかなくなった。

 大手新聞の社会部記者は語る。

 「公共波の番組を通じて沢本さんの下着露出パフォーマンスが秋葉原で公然と行われている……と大々的に報じられたわけですから、地元の警察は顔に泥を塗られたようなものです。地元商店街から『歩行者天国における行き過ぎたパフォーマンスはやめましょう』というキャンペーンもありまして、パフォーマーの解放区になっている秋葉原の歩行者天国も『この際、少し締め付けよう』という声が警察内で高まった。結局、沢本さんを『みせしめ』として逮捕する結論になりました」

 彼女がパンツを見せて人を集めたのは4月20日のことだ。それから5日も経ってから警察は逮捕に踏み切り、沢本さんは「犯罪者」に仕立てられた。

 スポーツ紙記者の1人は、

 「全国ネット中継されたのが沢本さんにとっては不幸でしたね。『過激露出』を何もしないで放置しておくのかという非難を全国から受けるのでは、と地元署は恐れた。騒ぎになった以上、落とし前として逮捕する——という流れに自然となってしまった。注目され過ぎたが故の不幸です」

と逮捕の舞台裏を証言する。

(記者:及川 健二)

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