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2008年05月16日(金) 00時00分

ウイルス作成の大学院生に猶予付き有罪判決 京都地裁朝日新聞

 アニメ画像や知人の顔写真を無断で使ったコンピューターウイルスを作成したとして、著作権法違反と名誉棄損の罪に問われた大阪電気通信大大学院生、中辻正人被告(24)に対し、京都地裁は16日、懲役2年執行猶予3年(求刑懲役2年)の判決を言い渡した。柴田厚司裁判官は「知人の実名をウイルスに記載して作成者だと思わせるなど巧妙で卑劣な犯行だが、反省している」と量刑理由を述べた。

 判決は、中辻被告がファイル交換ソフト「Winny」(ウィニー)を介して流布したウイルスにアニメ画像を使ったことについて「モニターに画像を表示させて注意を引き、対応を遅らせてウイルスをうまく機能させられると考えた」と指摘。知人の顔写真の添付については「知人をからかい、自分の作ったウイルスが有名になることを企図しており、動機に酌量の余地などない」と非難した。

 さらにネット上に広く流布されたことを踏まえて「名誉棄損状態の解消は不可能」と指摘。知人の電話番号や住所など個人情報を含んでいたことから「(知人は)パソコンがウイルスに感染したとみられる人から自宅に電話がかかり、多大な迷惑をこうむった」などと述べた。

 弁護人が求めた罰金刑については「刑事責任が重く、選択はできない」とした。ただ、中辻被告が同大学から無期停学処分を受け、今後はウィニーを利用しないと誓っていることを挙げ、「一定の社会的制裁を受けている」などとして執行猶予とした。弁護人は「懲役刑は不満だが、執行猶予が付いたのでやむを得ない」として控訴しない方針を明らかにした。

 判決によると、中辻被告は06年1月ごろから、ネット上の掲示板「2ちゃんねる」で注目を集めようと、隠し撮りした知人男性の顔写真などを添付したウイルスをウィニーを介してネット上に流し、男性の名誉を傷つけた。さらに同年8月ごろから、アニメの画像を添付したウイルスをネット上に流し、アニメ制作会社の著作権などを侵害した。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805160038.html